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パナソニックの人事制度改革に注目

世界標準を目指すグローバル企業の模索、「役割等級制」は機能するか

永井隆 ジャーナリスト

 パナソニックが人事制度を見直していく。同社の首脳は、次のように話す。「これまでの職能資格制を廃して、組合員を含め役割等級制へと来年度から移行させていく。人事制度が、(日本国内でしか通用しない)ガラパゴスであってはならない」

 同社のいう役割等級制は、職務等級制とも呼ばれる制度。2014年10月には管理職には適用されており、4月から一般社員にも広げる。日本企業では管理職は職務等級制(パナソニックのいう役割等級制)、一般社員は職能資格制というケースはあるが、パナソニックはそこから一歩踏み出す。

日本的経営を支えた職能資格制

 職能資格制は、日本的経営の特徴である年功序列を支えてきた根幹だった。入社年次で横並びに昇格させるなど、「人」をベースに設計されている。

 主事や参事といった資格等級が同じならば、職位が部長であろうと部下をもたない次長であろうと、あるいは“働かないオジサン”であろうと基本の賃金は一緒だ。一般には資格ごとに設定されている成果部分で差が開く形だ。総合職を育成し長期雇用を実現させたが、年功型賃金であるため総人件費は膨らんでいく。

 日産自動車のある役員はこう指摘したことがある。「職能資格制により極端な選別を行わず、大きな差をつけないことで全員のやる気を喚起してきた。平等主義が生む均質でレベルの高い人材は、日本企業の強さだった。経営危機に陥った90年代後半までの日産はこの典型。いまは違うが」

「職」を基準とする職務等級制

 これに対し、職務等級制は人ではなく「職」が基準。営業本部長、開発部長、東京支店長といった職務で報酬が決まる。

 年齢や性別、人種、入社年次などは関係なく、職務を担えて結果を出すことが重要とされる。何でもやる総合職ではなく、職務専門家が求められ、日本企業のように営業から広報に異動するようなことはまずない。米欧の大手企業で多く導入されていて、現状はグローバルスタンダードといえる。

パナソニックの津賀一宏社長

 パナソニックでは、津賀一宏社長直轄の戦略本部が同社版の役割(職務)等級制を設計した。導入される4月は、出向扱いの旧三洋社員ら約7000人が転籍となるタイミングとも重なる。

 ただ、日本企業が従来の職能資格から職務等級へ移行するのは、そう簡単ではない。

 まず、企業組織の構造そのものが欧米の企業とは違う。日本企業は人事部が社員の人事権を持ち、採用に始まり異動、役員になるまでの昇進昇格、評価の仕組みなど、ほとんどを決めていく。また、日本の大手企業では幹部である管理職の構成比は、約3割を占める。

 米国などの企業では、

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