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[2] 素養が問われる深遠なる遊戯(下)

ゴルフの精神に新しい命を吹き込もう!

山口信吾 ゴルフ作家

ゴルフコースは男を磨く修行の場

 オノラブルカンパニーで百戦錬磨の紳士たちに交じって心底ゴルフを楽しめたのは、かつて接待ゴルフにおいて、会社の先輩や得意先の紳士たちに企業人としての素養を徹底的に叩き込まれたからだ。

 思い返せば、接待ゴルフにも「ゴルフの精神」という通奏低音は流れていたのだ。接待ゴルフには、世界最古のゴルフクラブでのゴルフの楽しみ方と相通じるものがあった。真剣勝負をしながらも、決して相手に嫌な思いをさせないプレーを心がけていた。

細長いグリーンの両側に5つの深いタコツボバンカーが待ち受ける打ち上げの難関ホール(ミュアフィールド13番パー3)

 ある接待ゴルフで、上級者の上司と一緒に回ったときのことだ。ぼくはグリーン手前のバンカーに打ち込んだ。前進すると、グリーンとの間にもう一つのバンカーが横たわっていた。厄介なダブルバンカーだ。

 ピンを狙うには、バンカー越しにバンカーショットをする必要がある。そのころバンカーショットが不得手であったぼくは、目の前のバンカーを避けて、グリーンの端に向かってボールを打ち出した。もう一度バンカーショットをする羽目になれば、大事な得意先を待たせてしまうのではないか、という考えが閃いたのだ。

 このプレーを見ていた上司が、「(ゴルフの精神を)わかっているな!」と絶賛してくれた。20年も前のこのときの情景は今も脳裏に鮮明に残っている。

 ゴルフ愛好家でハンディ5の得意先との接待ゴルフの日には、朝から台風の余波で雨がざあざあ降っていた。お茶を飲みながら天気の回復を待っていても雨はやみそうにないどころか、霧が立ち込めてきた。

 これでは中止かなと思い始めた矢先に、その得意先は「さあ、行きましょうか」と立ち上がって、傘を差して1番ホールのティグラウンドに向かってすたすたと歩き始めた。そして、霧に覆われたフェアウェイに躊躇なく見事なティーショットを放った。ぼくは心底感動した。ゴルフは悪天候をものともしないスポーツの中のスポーツだ、という無言の教えを受けたのだ。この方との親交は今も続いている。

 洗練されたコースでのプレー、美味な食事、酒を酌み交わしながらの歓談、という妙なる組み合せは、オノラブルカンパニーであれ、日本の接待ゴルフであれ、長い伝統が磨いたゴルフの恵みの極致である。

ゴルフの精神に新しい命を吹き込もう

 スコットランドで現地の人とマッチプレーをしていると、ゴルフで大事なのは決してスコアではないことを思い知らされる。ゴルフで肝心なのは、

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