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[2]自然エネルギーを「選べる」社会へ

「回避可能原価+FIT法+環境価値(追加性)」の「三階建て」を提案する

飯田哲也 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長

 日本の環境エネルギー政策は、「過ち」を繰り返し、「矛盾」を積み上げてきた。3.11東京電力福島第一原発事故は、その日本のエネルギー政策の「過ち」が積もりに積もった一つの帰結といえるだろう。

 軽んじられた安全規制や核廃棄物問題、意味もなく続けられる核燃料サイクルなどさまざまな「宿題」が置き去りになり積み重なってきた原子力はいうまでもなく、ドイツなど海外に大きく後れを取った自然エネルギーの普及拡大、「世界一の省エネ国」と空威張りするものの内実は断熱もないお粗末な建築物群。気候変動(地球温暖化)問題に至っては、石炭火力を大増設する逆行政策を推し進めながら、国民に対しては原発推進のための「脅し」に使われる状況にある。

 今や日本の環境エネルギー政策は、少なくとも私の目から見れば、「おもちゃ箱」をひっくり返したように、取り散らかった無残な光景が広がっている。

 こうした状況は、歴史や社会構造・産業構造を含むさまざまな要因が積み重なった帰結であるだけでなく、その混乱が現在進行形で繰り広げられている状況でもあるのだが、すべてに通底しているのは、お粗末なまでの「デモクラシー」の欠落である。

 前回のプロローグで幕を開けたこの連載では、3.11後のさまざまな断面で「今」起きている話題や「事件」を取り上げ、その背景にある日本のエネルギー政策の同時代史を振り返りながら、どこに岐路がありどこで間違ったのかをあぶり出すことで、混迷を深める日本の環境エネルギー政策の「ディスコース」(軌跡)の軌道修正を図る一助としたい。

 今回は、電力小売り自由化の流れのなかで浮かび上がってきた「自然エネルギーの表示」あるいは「自然エネルギー選択」の問題を取り上げる。

 「自然エネルギー表示問題」の構図

 いよいよ来年には電力小売り自由化、つまり誰でも電力会社を選べるようになる予定だ。それに備えて、原発の電気を買いたくない人に自然エネルギーを届けようと、電力会社を準備している会社や生協もある。

 ところがここに来て、自然エネルギーの電気だと言って売ってはならない、自然エネルギーも原発の電気も石炭火力の電気もどれも同じものとして扱うという制度を国(経産省)が作ろうとしている。
なぜか。経産省事務方の説明は次のとおりだ。「『再エネの付加価値』はそれを負担する全需要家に帰属する。したがって再エネ電気であることを付加価値とした説明をし販売することは認めるべきではない」(総合資源エネルギー調査会電力システム改革小委員会第9回制度設計WG)という理屈だ。

 おまけに、自然エネルギーが薄く広く溶け込むなら原発も同じだとして、原発の電気だという表示もしない方向のようだ。こうして、自然エネルギーが選べないだけでなく、「味噌」(自然エネルギー)も「糞」(原発や石炭火力)もごちゃ混ぜの電力市場になる恐れが出てきている。

 これに対して、消費者団体や新しく電力市場に参入しようとしている事業者は反発している。経産省事務方の考え方には少しばかり無理や矛盾があり、そうした反発は当然といえよう。以下、解説する。

混同される再エネ表示と付加価値

 第一のポイントは、再エネ表示と付加価値との関係だ。「再エネ電気であることを付加価値とした説明をし販売すること」という経産省事務方の説明では、付加価値と説明(表示)が一体として扱われているのだが、ここは少していねいに見る必要がある。

参考図1 ドイツ・シェーナウ電力が需要家に説明している電源表示

 「再エネ表示」については、食品や化粧品の内容表示と同じように、欧州では2001年の欧州指令(注1)に基づいて、「発電源証明」(GoO)が各国の法律で決められている。この各国の法令にもとづいて、欧州の電力会社は、大手も小さな自然エネルギー電力会社も、消費者に対して自らの電気の表示をしている。たとえば日本とほぼ同じ固定価格買取制度(EEG)を持つドイツでは、EEGによる自然エネルギーとそうでない自然エネルギーを区分して表示しており、もちろん原発、石炭、天然ガスなどの内訳も表示している(参考図1および2)。

参考図2 ドイツ・エーオン社が需要家に説明している電源表示 ミックス電源
参考図2 ドイツ・エーオン社が需要家に説明している電源表示 自然エネ100%電力

 「再エネ電気である付加価値」とは何か

 さて、「再エネ電気である付加価値」とは何だろうか。地球温暖化防止のために削減が求められている二酸化炭素を削減する価値、大気汚染物資を削減する価値、エネルギー自給率を高める価値、地域の自立を高める価値など、いろいろ考えられる。

 その中で、

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