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ギリシャ危機と、嵐を呼ぶ(?)上海道中記

より本格的な危機になるのは中国のバブル崩壊

小林慶一郎 慶応大学教授(理論マクロ経済学)

 6月最後の週末は、旧知の有名エコノミストYさんのお誘いで中国・上海を訪問した。上海のある大学で日中経済についてのシンポジウムに参加するためである。日本側は団長のYさんと、大手新聞(残念ながら朝日新聞ではない)の有名コラムニストTさん、様々な分野で活躍する異能官僚のY氏、そして筆者の4人である。27日土曜日のシンポジウムを終え、28日の日曜日に雨の上海で朝食をとっているときにギリシャ支援交渉決裂のニュースが入ってきた。

 実はこの4人で上海を訪れるのは初めてではない。同じシンポジウムに過去2回参加しているのだが、最初に4人で訪れたのが2008年7月。リーマンショックの2カ月ほど前のことだった。あのときは、住宅バブル崩壊に苦しむアメリカがGSE(Government Supported Enterprises)と呼ばれた住宅ローン証券買取り公社(ファニーメイとフレディマック)に対して、政府による債務保証を決定した時だった。「BSE(牛海綿状脳症)よりもGSEの方が日本にとって問題だ」と上海行きの飛行機で不謹慎な駄洒落を飛ばしていたが、私たちはまさか2か月後にリーマンショックが起きるとは予想だにしなかった。

 それから7年。

 今度は、ギリシャがEUの支援策を受諾するか否かを国民投票にかけると突然表明し、まさか決裂しないだろうと思っていたギリシャ支援交渉が決裂してしまった。「これはジンクスですね」とTさん。私たちが上海に来ると世界経済に大波乱が起きるというわけで、私たちはまさに「嵐を呼ぶ男たち」といっても過言ではないでしょう、などと真顔でのたまう。

 しかし、私たちの「嵐を呼ぶ」上海行きのジンクスがリーマンショックのときと同じなら、ギリシャ危機はあくまでGSE問題と同じ程度のいわば「前座」であり、もっと大きな本格的な危機がそのあとにやってくる、ということではあるまいか。リーマンショックなみの危機と恐れてしかるべき問題は、

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