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TPP交渉は漂流しない、8月に合意する

二つに絞られた課題と米国のアジア・太平洋戦略

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 今回の閣僚会合でTPP交渉は実質的な妥結に至らなかった。8月に会合が予定されているが、ここまで会合を重ねて合意できなかったことが、短期間のうちに合意できるとは考えられないという予想が大半のようだ。

環太平洋経済連携協定(TPP)閣僚会合後の記者会見に臨む甘利明TPP相(中央)と米通商代表部(USTR)のフロマン代表(右から2番目)ら=2015年7月31日、米ハワイ州マウイ島、五十嵐大介撮影

 また、アメリカ議会が連邦政府に通商交渉の権限を与えたTPA(貿易促進権限)法が定めたスケジュールからすれば、8月に合意したとしても、アメリカ議会によるTPP協定の承認は、大統領選挙が予定されている来年にずれ込むことになる。その場合、民主、共和両党の選挙がらみの思惑によって、承認を得ることは困難になる。

 TPAに賛成した共和党の議員も、TPPは民主党のオバマ政権の成果になるとして、反対する可能性があるからだ。TPP交渉に参加している各国とも、このような状況は認識しているので、8月にまとめようとはしない。その場合、TPP交渉は、オバマ政権の次のアメリカの政権が通商交渉の方針を確立するまで、再スタートしなくなる。つまり、TPP交渉は漂流することになる。

 確かに、TPP閣僚会合に参加した人たちを取材していると、そのような結論になりそうである。

 しかし、今回の閣僚会合で、残された課題は、二つに絞られた。

 一つは、バイオ医薬品の開発データの保護期間を12年と主張するアメリカと5年程度を主張する他の国との対立である。バイオ医薬品に高い技術力を持つアメリカは、自国の製薬業界の利益のために、長い期間を主張する。他方、その他の国は、安いジェネリック製剤を開発して、できる限り医療費を安く抑えたい。データの保護期間が長くなると、その期間中はジェネリック製剤を開発できなくなるので、できる限り短い期間を主張する。日本の製薬業界もバイオ医薬品については、競争力はない。

 もう一つは、

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