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[22]「ゆう活」が示す働き手不在の働き方改革

「子育ても家事もやったことがない人の発想」

竹信三恵子 ジャーナリスト、和光大学名誉教授

 国家公務員の「ゆう活」が始まって1カ月余。働き方を朝型にして早期退庁を促すことで、夕方の時間を仕事以外のことに有効活用できるようにし、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実現する、という計画だ。

地下鉄の駅を出て職場に向かう人たち=2015年7月11日午前7時29分、東京・霞が関

 だが、現場の職員たちからは「ワークライフバランス」にはむしろ逆行するという悲鳴のような声が相次ぎ始めている。見えてくるのは、主体のはずの働き手をカヤの外に置いた、トップダウン型働き方改革の歪みだ。

「ゆう活」のユーウツ

 「ゆう活」は、企業の働き方改革を掲げる経済産業省が、そのモデルとして足元での実施を提唱、「夏の生活スタイル変革」として3月に内閣人事局が実施方針を打ち出した。7~8月の期間、午前9時の始業を7時半から8時半に早め、午後4時15分から5時15分の定時に退庁する。早朝出勤した分だけ早く退庁し、買い物や家族との生活、趣味など、仕事と生活の調和を楽しむ、との構想だ。

 原則、すべての府省(地方機関も含む)が対象になるが、①交代制勤務等業務の性質上実施が困難な職員、②育児・介護等本人の事情により実施が困難な職員、③実施することにより確実に行政サービスの低下につながる職員、④業務の繁忙期となることがあらかじめ見込まれ、実施することにより7、8月を通じて確実に労働時間の増加につながる職員、は免除を申し出ることができる。

 だが、施行後、職員たちからは、負担が増えた、疲れた、との声が相次いでいる。まず、施行前から懸念されていた国会対応だ。安保法制の審議のため、夏休み期間を含めた大幅な会期延長となり、早朝に出勤しても国会に合わせて待機せざるをえず、深夜まで帰れない職員が多い。

 中央官庁は午後8時には冷房が止まってしまう。うだる暑さの中での待機だ。「深夜まで待機して翌朝7時に出勤。本当に疲れた」と

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