都知事になったらどういう方法で東京に人が集まらないようにするのですか?
2016年07月26日
東京都知事選挙の投票日まで一週間を切った。各種の世論調査によれば、鳥越俊太郎、増田寛也、小池百合子の3氏が激しく争っているようだ。だが、3氏の選挙公約を読んでも、ほとんどの人はその違いがわからないのではないだろうか?
例えば、東京が現在抱えている焦眉(しょうび)の課題である「待機児童問題」に関しては、3氏とも「待機児童ゼロを目指します」(鳥越)、「8,000人の待機児童を早期に解消」(増田)、「『待機児童ゼロ』を目標に規制を見直す」(小池)としており、これだけでは違いがわからない。
また、防災・減災対策についても、「住宅耐震化率100%」(鳥越)、「木造住宅密集地域の不燃化・耐震化をスピードアップ」(増田)、「住宅の耐震化・不燃化を2020年までに加速」(小池)といった具合で、ほとんど違いがない。
多少力点の置き方に違いが出ているのが社会保障・高齢化対策で、「がん検診受診率の引き上げ。特別養護老人ホームなどの高齢者の住まいを確保」(鳥越)、「首都圏全体で介護体制を構築。子どもの貧困をなくす」(増田)、「高齢者・障害者の働く場所を確保。予防医療の推進」(小池)となっている。
ここで目につくのは、小池氏が直接介護の問題に言及していないことだろう。選挙戦術として、小池氏は現役世代、鳥越氏は高齢者をターゲットにしており、増田氏はその両方を幅広く、ということがここから見える。
都知事選は自治体の首長選挙であるので、政策で大きな違いがでないのは仕方がないのかも知れない。自治体が抱える現下の焦眉の課題というのは、おそらく誰が考えても同じようなものになるだろう。そこで、増田氏は岩手県知事、総務相という行政経験を強調し、小池氏は閣僚経験(環境相、防衛相)を含む政治家としての経歴を強調する、ということになる。
とりわけ増田氏は、その行政経験が岩手県知事(1995~2007年)そして総務大臣(2007~2008年)であるので、東京都知事という役職に見合う行政経験としては申し分がない、と見ることができる。そして行政経験があるということは、トラックレコードがあるということだから、これは東京都知事としての適格性の判断材料になる。
さらに、増田氏には、その行政経験をベースとして将来の地方自治の課題を考えた2冊の編著書、「地方消滅」「東京消滅」(いずれも中公新書、2014年、2015年)がある。これらにより、増田氏の地方自治・地方行政への考え方がわかるはずだ。
本稿では、増田氏に絞って、その著書と行政経験から同氏の東京都知事としての適格性について、何が言えるのかを考えて見たい。残念ながら、鳥越氏と小池氏についてはこのような検討を行うことが難しい。鳥越氏には行政経験がないし、小池氏の行政経験は地方自治との関連性が薄いからだ。
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