人は人こそができる付加価値の高い仕事にシフトしてくことを考えたい
2016年09月13日
野村総合研究所では、英オックスフォード大学マイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究で、国内601種類の職業について、今後10-20年後にかけ、それぞれ人工知能やロボット技術等で代替しうる確率を試算した。その結果、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと推計された(注1)。
注1 「労働人口の49%」とは、高い確率(66%以上)で、コンピュータで代替できる職種の労働人口の割合を集計した結果である。
日本は人口減少に転じて久しく、これから2030年にかけて、さらなる人口減、そして、労働力不足の顕在化が懸念されている。労働力が不足するなかで、社会のサービスレベルを維持、発展させていくためには、不足する労働力を、量的に補うか、質的に補うかの2択がある。量でいえば、外国人労働者の積極的な招致、女性や高齢者の活躍といった点が期待される。
一方で、質でいえば、近年研究の発展と社会実装が急速に進む人工知能やロボット技術等によって、人の仕事を補助、ないし代替していくことが挙げられる。もしくは、社会のサービスレベルそのものを落とし、緩やかに縮小していく社会を目指すことになる。これは、どれが良いとも悪いとも言えず、私たちの、日本の選択になる。
図1に、今回の研究によってコンピュータによる代替可能性が「特に高い」とされた100の職業、図2に「特に低い」とされた100の職業を示す。代替可能性が高い職業の中には、一般事務員や医療事務員や銀行窓口係のような事務スタッフ、レジ係や検針員や列車清掃員のような定型業務の従事者、専門的知識や非定型業務を一定程度含みつつも定型業務が多い、機械木工や旋盤工や鋳物工などの技術職が数多く挙がっている。一方の代替可能性が低い職業には、幼稚園から大学までの教員・研究者、医者や芸術家・クリエイターなどが含まれている。
「コンピュータで代替」とは、ある職種に従事する1人の業務すべてをコンピュータが代わって遂行できることを意味する。ご留意いただきたいのは、あくまで、技術的代替可能性だという点である。個々の職業が実際に代替されるかどうかは分析していなく、各職種に従事する人のスキルや職業の特徴をもとにした統計的な分析の結果を示したものである。
本研究より、研究チームでは、コンピュータに代替されにくい職業の特徴として、抽象的な概念を整理・創出するような「創造性」、他者との協調や交渉がありサービス志向性が求められる「ソーシャル・インテリジェンス」、決まった形で仕事を定義し難く秩序的・体系的な操作で業務が完結しない「非定形」という3つのキワードを提案した。逆に言えば、それぞれの特徴を持たない、または、それぞれと反義の特徴を持つ職業は、代替可能性が高いということになる。
既に、人工知能分野、特にディープラーニング技術の研究開発に伴い、画像判読をはじめとする多くの分野で人間の認識を上回る結果が報告されている。また、ロボット技術についても、自動運転を筆頭に、物流におけるピッキング作業、建設現場の無人建機など、自動化の取り組みが進んでいる。さらに、専門的な知識や経験を必要とする会計や法務の業務や、文書作成等の領域においても、さまざまな自動処理のサービスが生まれてきている。ただし、実際に仕事がコンピュータに完全に置き換わるかどうかは、
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