民進党は、国民に二重の負担を強いている米政策の全面的な廃止を対案として提示せよ
2016年10月05日
ある全国紙が、米を輸入する商社が実際の輸入価格(例えば100円)よりも高く設定された農林水産省の予定価格(150円)通りに輸入したと偽り、農水省の予定価格よりも安く輸入した部分(50円)を卸売り業者にリベートとして支払い、卸売り業者は農水省が予定した国産米と同水準の販売価格(200円)よりも安く(150円)販売していると報道した。
農水省が、輸入米の価格は国産米の価格と同水準なので、環太平洋経済連携協定(TPP)でアメリカ等からの輸入を増やしても米農業に影響はないと説明していたことから、民進党はこの問題の実態解明がなされない限り、TPP協定の承認や、TPPが米農業に影響はないという前提で作られた予算案の審議には応じられないと主張している。この問題がTPPの国会承認の最大の障害になりつつある。
世界貿易機関(WTO)で日本は高関税での輸入以外に77万トンの義務的輸入枠の設定を約束している。これがミニマムアクセス米と言われるものである。2008年の汚染米事件は、これが原因だった。
このミニマムアクセス米を、国内の米需給に影響を与えないようにするため、海外からの援助要請が来るまで長期間保存していたために、ミニマムアクセス米にカビが生えてしまった。カビ米を安く政府から買い受けた業者が、主食用などの用途に高く転売したのが、この事件だった。
この77万トンの中に、10万トン主食用などに向けられるSBS(同時売買方式)という特別な枠がある。
これは、ガット・ウルグアイラウンド交渉で、アメリカが直接実需者や消費者に販売したいと主張したために設けられたものである。これは日本での卸売業者(買い手)と輸入商社(売り手)がペアになって入札し、国内販売価格と輸入価格の差の大きいものから枠を落札できるというものである。この差はマークアップと呼ばれ、農林水産省が徴収する。
今回の問題を仮の数字を当てはめて説明しよう。
まず農林水産省が国内販売予定価格200円と輸入予定価格150円を設定する。この差が最低のマークアップで、この場合では50円となる。
ペアの業者が、国内販売申告価格200円と輸入申告価格140円、マークアップ60円で入札すれば、他にこれより大きなマークアップを申請したペアがなければ、落札・輸入できる。
今回価格偽装と言われる問題は、実際の輸入価格が110円の時、申告価格140円との差の30円をリベートとして国内の買い手に払い、結果的に買い手の販売価格が、国内販売申告価格200円からリベート30円を引いた170円となっていた、というものである。
これは農林水産省の国内販売予定価格200円を下回る。農林水産省はSBS輸入米の価格が国産の低価格米と同じだとして、TPPでアメリカやオーストラリアにさらなる輸入枠の拡大を設定しても、国内の米農家に与える影響はないと説明していた。
今回の報道でこれが誤りだとわかったと民進党は追及する構えだという。また、農協も輸入米が安く流通し国産米に影響を与えているのではないかという不安や不信が高まっているとして、農林水産省に事実関係の解明や改善措置をとるよう申し入れている。
指摘されている問題は、輸入米が国産米よりも安く販売されているのではないか、それが国内の米需給に影響を与え、米価低落の原因を作っているのではないか、ということに尽きる。
しかし、そうなのだろうか?
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