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中長期的景気後退なのか、成熟なのか

成熟という観点から見れば、成長率が大きく低下した日本は世界のトップランナーだ

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

サマーズの「中長期的停滞論」

日本銀行で講演したローレンス・サマーズ元米財務長官(右)と黒田東彦・日銀総裁=9月30日拡大日本銀行で講演したローレンス・サマーズ元米財務長官(右)と黒田東彦・日銀総裁=9月30日

 ハーバード大学教授ローレンス・サマーズ(元財務長官)は2016年2月の「Foreign Affairs」で、「中長期的景気停滞の時代―どう対処すればいいのか」(The Age of Secular Stagnation: What It Is and What to Do About It)を発表し、かねての主張である中長期停滞論を論文の形で示したのだった。

 サマーズ教授は、2009年のリーマン・ショック後の景気回復が弱々しいもので、実質金利がマイナス領域で推移したにもかかわらず、「先進国がリーマン・ショック前の状態に戻ることは容易ではないと」主張し、投資需要の不足・低い成長率と所得の伸び悩み、ディスインフレないしデフレが今後とも続いていくと、長期停滞の可能性を示唆したのだ。

 たしかに先進国の成長率は1980年代・90年代に比べると大きく下がってきている。

 アメリカのここ6年(2010~15年)の年平均成長率は2.12%だが、1980年代(1980~89年)の年平均成長率は3.14%、1990年代(1990~99年)のそれは3.24%だった。

 日本の場合、ここ6年の成長率の年平均は0.78%、1980年代は4.41%、1990年代のそれは1.47%だった。ヨーロッパ諸国でも状況はほぼ同様、経済成長率は1980年代・90年代に比べると大きく下がってきている。

 サマーズはこれをSecular Stagnationと呼ぶのだが、別の見方をすれば、経済の成熟(maturity)だと考えることもできる。

 多くの先進国の1人当たりGDPはすでに4万USドル、5万USドルのレベルに達している。2015年にはアメリカの1人当たりGDPは5万5805USドル、イギリスは4万3751USドル、ドイツは4万997USドル、フランスは3万7675USドルだ。日本は、2015年は円安の影響もあって3万2486USドルだが、日本円では実質で400万円を超えている(2015年416.5万円、2014年413.9万円、2006年に400万円を超し、その後2009年・2011年以外は400万円台を維持している)。

「豊かなゼロ成長の時代」

 資本主義経済が成熟し、「豊かなゼロ成長の時代」に入ったということなのだろう。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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