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「暮らし」を変える拡張現実(AR)の可能性

夢を構想する「想像力」と「創造力」

土堤内昭雄 ニッセイ基礎研究所主任研究員

拡大ポケモンを探しながら交流するファンたち=北海道江別市

『ポケモンGO』と拡張現実~「仮想」から「現実」へ

 今年は仮想現実(Virtual Reality)元年と言われている。VRは主にゴーグル型の端末を装着し、コンピューターがつくりだす仮想空間でさまざまな体験をするものだ。一方、GPSの位置情報を使って現実空間に映像や音声などのコンピューター情報を付加し、現実と仮想世界が重なる体験をする拡張現実(Augmented Reality)も注目されている。今年7月に配信が開始されたスマホ用ゲーム『ポケモンGO』の人気の秘密のひとつも、CGで精密に描かれたポケモンが現実空間に現れ、非日常の出来事を日常世界に引き込むARの技術によるものではないだろうか。

 『ポケモンGO』は各所のポケストップを訪れ、モンスターボールなどを集めてポケモンを捕らえるゲームだ。ポケモンを引き寄せるための「ルアーモジュール」という道具があり、これを使ったポケストップでは、30分間に限りポケモンの出現が活発になる。「ルアー」が使用されているポケストップには花びらが舞い、多くの人がポケモンを求めて集まってくる。「ルアー」は仮想世界のポケモンだけでなく、現実世界の人間も引き寄せるのだ。このように『ポケモンGO』は、人の外出を促し、交流機会を増やすが、それが仮想世界ではなく現実世界で起こっていることが興味深い。

『ポケモンGO』が高齢者にとっての「健康アプリ」に

 今日も公園をはじめ、あちこちで『ポケモンGO』を楽しむ人の姿がみられる。このゲームはスマホの位置情報を使って現実空間で展開されるため、プレーヤーは外に出かけなくてはならない。その結果、引きこもる若者や家のなかで長い時間を過ごす人たちの外出も誘発する。今後、バーチャルなポケモンを追いかける人たちが、現実世界で新たなコミュニティーを形成し、リアルにつながる社会の実現も決して夢ではないだろう。

 『ポケモンGO』は、どこか人気テレビ番組『ブラタモリ』に似ている。自分の日常生活の周辺にあるスポットを巡り、身近にありながらもこれまで気付かなかった地域の現状を発見する面白さがある。また、ゲームをするうちに無意識によく歩きまわり、運動不足の解消にもなる。『ポケモンGO』は、中高年にとって元気を維持するための「健康サプリ」にもなる「健康アプリ」なのだ。

 最近では高齢者のひとり暮らしが増え、地域のつながりが薄れ、社会的孤立が深刻になっている。『ポケモンGO』というゲームにより高齢者もスマホを使ってポケモンを捕まえながら外出を楽しむことができる。家に閉じこもりがちな高齢者が頻繁に外出するようになれば、社会的孤立の防止、健康寿命の延伸、医療・介護保険料の低減にもつながる。拡張現実がひとり社会を生きるたくさんの人たちを結びつけ、安心できる高齢社会の一助となるかもしれない。

『シン・ゴジラ』と拡張現実~「虚構」超える「現実」

 今年、もうひとつ大きな話題になったのが、夏に公開された映画『シン・ゴジラ』だ。東京湾に突如出現した巨大不明生物(のちにゴジラと命名)が、首都・東京に上陸するのだ。特撮が駆使され、リアリティーあるゴジラの動きや破壊されてゆく巨大都市・東京の姿が精緻に描かれている。映画のキャッチコピーは『現実対虚構』で、 ・・・続きを読む
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筆者

土堤内昭雄

土堤内昭雄(どてうち・あきお) ニッセイ基礎研究所主任研究員

1977年京都大学工学部建築系学科卒業、1985年マサチューセッツ工科大学大学院高等工学研究プログラム修了。1988年ニッセイ基礎研究所入社。2013年東京工業大学大学院博士後期課程(社会工学専攻)満期退学。 「少子高齢化・人口減少とまちづくり」、「コミュニティ・NPOと市民社会」、「男女共同参画とライフデザイン」等に関する調査・研究および講演・執筆を行う。厚生労働省社会保障審議会児童部会委員(2008年~2014年)、順天堂大学国際教養学部非常勤講師(2015年度~)等を務める。著書に『父親が子育てに出会う時』(筒井書房)、『「人口減少」で読み解く時代』(ぎょうせい)など。

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