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「より遠く、より速く」の近代資本主義は終わった

低利子率の時代、成熟先進国は「より近く、よりゆっくり」進まざるをえなくなっている

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

世界経済が中長期的停滞状況に入った

 2016年の世界経済成長率は3.1%と見通されている。2015年は3.2%だったので、景気後退の時期だったといえるのだろう。特に先進国地域は、2015年の2.1%から1.6%に成長率を落としている。アメリカは2.6%から1.6%へ、ユーロ圏は2.0%から1.7%へ下っているのだ。イギリスも2.2%から1.8%に後退している。

 新興市場国及び途上国は若干成長率を戻しているが、それでも2014年に比べると(2014年は4.6%)、2016年は4.1%とかなり低くなっている。天然資源価格の下落で2015年にはロシアがマイナス3.7%、ブラジルがマイナス3.8%と大きく成長率を下げ、2016年の回復もそれ程力強いものではないからだ(2016年、ブラジルはマイナス3.3%、ロシアはマイナス0.8%)。

日本銀行で講演したローレンス・サマーズ元米財務長官(右)と黒田東彦・日銀総裁拡大日本銀行で講演したローレンス・サマーズ元米財務長官(右)と黒田東彦・日銀総裁

 2016年10月の世界経済見通し(WEO)で、国際通貨基金(IMF)は4月の見通しを下方修正している。例えば、先進国の成長率1.6%は4月の予測1.9%から0.3%下げているし、2017年の予測1.8%も0.2%の下方修正だ。米国の減速は弱い企業投資と在庫蓄積ペースの減速が理由としてあげられている。

 また、ブレクジット(英国のEUからの離脱)を受けた不確実性が投資家の信頼に大きな影響を及ぼすとして、英国の成長率は2015年の2.2%から16年は1.8%、17年は1.1%まで減速するとしている。ユーロ圏も減速が加速し、2016年は1.7%、2017年は1.5%と予測されている(2015年は2.0%)。

 ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、フォーリン・アフェアーズの2016年2月号に「中長期的景気後退の時代―The Age of Secular Stagnation」を発表しているが、彼の言うように、2009年のリーマン・ショック以後の景気回復は力強さを欠いており、世界経済が中長期的停滞状況に入ったといえるのかもしれない。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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