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もはや誰も「イバンカ・ブランド」を扱えない

「さわらぬ神にたたりなし」 長女のブランド騒動とトランポノミクスのリスク

吉松崇

イバンカ・ブランドの取り扱いをやめたノードストローム

ニューハンプシャー州の予備選前日、5千人以上が集まった会場で演説するトランプ氏と長女イバンカさん=2016年2月、米マンチェスター拡大ニューハンプシャー州の予備選前日、5千人以上が集まった会場で演説するトランプ氏と長女イバンカさん=2016年2月、米マンチェスター

 アメリカの大手高級百貨店チェーンの一つである「ノードストローム」(本店所在地:ワシントン州、シアトル市)が、2月2日、今春の品ぞろえからイバンカ・トランプ・ブランドの取り扱いを停止すると発表して、波紋を呼んでいる。

 トランプ大統領は、2月9日、ツイッターで「イバンカがノードストロームから不当な仕打ちを受けている」と不満を表明して見せた。また、イバンカ・トランプの兄であるドナルド・トランプ・ジュニアもツイッターで、「ノードストロームの政治的な決定により、我々の支持者はこの百貨店に対する不買運動を始めるだろう」とノードストロームを牽制(けんせい)した。

 ノードストロームはこの発表で「我々の決定は、純粋にブランドのパフォーマンスによるもので、政治的な意図はまったくない」と強調している。実際、昨年後半からイバンカ・ブランドの売り上げが大幅に減少したのは事実であるようだ。2016年の同ブランドの売り上げは前年比26%減、大統領選挙の前月である昨年10月に限ると前年同月比70%の減少であったという。

 その理由は、明らかに反トランプ派によるボイコット運動である。反トランプ派は「ノードストロームの決定は我々の勝利」だと主張して勝利宣言を行った。

取り扱い停止でノードストロームの株価は上昇

手をつないでホワイトハウスを移動する、トランプ米大統領の長女イバンカさん(右)と、夫で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏=2017年2月、米ワシントン拡大手をつないでホワイトハウスを移動する、トランプ米大統領の長女イバンカさん(右)と、夫で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏=2017年2月、米ワシントン

 だが、ノードストロームの決定は「政治的」なものでは全然ない。実際、昨年の秋には、ノードストロームは反トランプ派のボイコット運動を受けて、「我々がイバンカ・ブランドの商品を取り扱っていることに政治的な意図はまったくない」と自らの立場の弁護に追われていた。

 この頃、社長のピーター・ノードストロームは「我々は、反トランプ派、トランプ派の双方から、不買運動の脅しを受けている。どうやっても、我々は一定の顧客を失うことになるだろう」と嘆いていたようだ。

("Nordstrom Is Cutting Ivanka Tramp's Brand Due to Poor Sales" Bloomberg, February 3, 2017)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-02-02/nordstrom-said-to-wind-down-relationship-with-ivanka-trump-brand

 百貨店であるノードストロームにとっては、売り上げがすべてである。政治的な理由であれ、他の理由であれ、売り上げが伸びないブランドに店舗スペースをいつまでも提供するわけにはいかないという当然の理由で取り扱い停止に踏み切った訳だ。

 株式市場はノードストロームの決定を歓迎しているようだ。同社の株価は、発表前日(2月2日)の終値である43.51ドルに対し、本稿執筆時点(2月13日)の終値は44.36ドルである。

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)、主要論文:「アメリカの金融政策をめぐる三つの視点と日本への教訓」(原田泰・齋藤誠編『徹底分析アベノミクス』中央経済社、2014年)。

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