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超高齢社会向け「保健医療」のパラダイムシフトを

「健康」と「幸せ」の関係を考える

土堤内昭雄 ニッセイ基礎研究所主任研究員

「健康寿命」を延ばそう

 日本では、2000年に健康増進法に基づき『21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)』が始まった。2013年に全部改正が行われ、『健康日本21(第2次)』には健康増進のための基本方針として、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている。幸せに暮らすためには、ただ長生きするだけではなく、誰もが健康寿命(日常生活に制限のない期間)を延ばすことが重要だからだろう。

拡大「健康寿命」を延ばそうと施設独自の体操をする人たち=富山市
 日本人の平均寿命は、2001年からの10年間に男性で1.48年、女性で1.37年延びたが、健康寿命の延びは男性で1.02年、女性で0.97年にとどまっている。つまり、平均寿命と健康寿命の差である「不健康な期間」は、男性で0.46年、女性で0.4年長くなっているのだ。そのため、『健康日本21(第2次)』では、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目標に設定している。

 2016年5月、OECDは加盟34カ国にロシア、ブラジル、南アフリカ、ラトビアを加えた38カ国の幸福度(well-being)指標である「Better Life Index:BLI」を公表した。BLIは生活の11分野の指標から構成されており、日本は総合23位だ。「所得」や「教育」などの分野で高いスコアを獲得する一方で、「ワーク・ライフ・バランス」や「健康」などにおける評価が低い。日本は「健康」分野で38カ国中の34位と低迷している。その理由は、「平均寿命」が1位にもかかわらず、「主観的健康(Self-reported health)」において「(非常に)良い」と答えた人の割合が最下位になっているからだ。

 『健康日本21(第2次)』においても、目標の実現に当たり「自分が健康であると自覚している期間」についても留意するとしている。「主観的健康寿命」とも言える同期間は、健康寿命を下回っており、その延びも2001年から10年までの間に男性で0.35年、女性で0.37年に過ぎない。誰もが加齢による衰え(老化)を経験する超高齢社会では、健康状態が万全でなくなるのは当然だろう。今後は、客観的な健康寿命を延ばす努力と同時に、なんらかの日常生活の制約が生じても、自らが幸せと思える「主観的健康寿命」を延ばすことも重要ではないだろうか。

「健康格差」を縮めよう

 『健康日本21(第2次)』のもうひとつの基本方針は「健康格差の縮小」だ。健康格差は職業、所得、教育、性別、地域環境、社会心理など多くの社会経済要因から生じている。健康のひとつの代替指標として平均寿命を捉えると、富裕層ほど平均寿命が長いという調査結果がある。所得が多ければ健全な食生活や運動習慣が身につき、疾病予防のための保健医療資源へのアクセスも容易だからだろう。もちろん、健康だから所得が多いという逆の因果関係も想定される。

 では、性別における健康格差はどうだろう。2015年の平均寿命は、男性80.79歳、女性87.05歳とその差は6.26年だ。男女差の推移をみると、 ・・・続きを読む
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筆者

土堤内昭雄

土堤内昭雄(どてうち・あきお) ニッセイ基礎研究所主任研究員

1977年京都大学工学部建築系学科卒業、1985年マサチューセッツ工科大学大学院高等工学研究プログラム修了。1988年ニッセイ基礎研究所入社。2013年東京工業大学大学院博士後期課程(社会工学専攻)満期退学。 「少子高齢化・人口減少とまちづくり」、「コミュニティ・NPOと市民社会」、「男女共同参画とライフデザイン」等に関する調査・研究および講演・執筆を行う。厚生労働省社会保障審議会児童部会委員(2008年~2014年)、順天堂大学国際教養学部非常勤講師(2015年度~)等を務める。著書に『父親が子育てに出会う時』(筒井書房)、『「人口減少」で読み解く時代』(ぎょうせい)など。

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