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トランプ米政権と世界貿易機関(WTO)

自由貿易と保護貿易のどちらが重要か、政権は壮大な経済実験をしようとしている

山下一仁

WTOの判断を無視する姿勢を打ち出した政権

米連邦議会で演説をするトランプ大統領。後方にペンス副大統領(左)とライアン下院議長が座り、拍手を送りながら見守った=2月28日、ワシントン、ランハム裕子撮影 拡大米連邦議会で演説をするトランプ大統領。後方にペンス副大統領(左)とライアン下院議長が座り、拍手を送りながら見守った=2月28日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 トランプ米政権は、議会に提出した通商政策の年次報告で、米国に不利な世界貿易機関(WTO)の判断が出ても拘束されない、つまり無視することを鮮明に打ち出した。

 少し解説しよう。

 アメリカがWTOに約束している品目ごとの関税は低く(例えば自動車で2.5%)、45%のような高い関税はほとんどない。トランプ氏が大統領選挙中に主張したように、アメリカが中国のみに一律45%という関税をかけるとすれば、WTO協定の中のモノの貿易を規律しているガットの第一条(どの国も同じように扱うという最恵国待遇の原則)及び第二条(約束した税率を上回らない)に明白に違反する。

 中国がアメリカの措置をWTOの紛争処理手続きに提訴すると、必ず勝つ。アメリカはWTOから是正勧告を受ける。今回のアメリカ年次報告は、この勧告に拘束されない、つまり一律45%の関税は撤回しない・維持すると言っている。これ自体はWTO上、許される。違反していても是正する必要はない。そのかわり、WTOは訴えた国に対抗措置を打つことができることを認めている。中国はアメリカからの輸入品の関税を大幅に引き上げることが可能となる。

過去の例を見ると……

 過去には、次のような例がある。中国がWTOに加入する前の2001年、日本は中国からのネギやシイタケなどの農産物の輸入が増加しているとして、これらの中国産品の関税を大幅に引き上げるセーフガード措置を発動した。これに対して、中国は、日本からの自動車、携帯電話、エアコンに100%の追加関税をかけたため、日本側はセーフガード措置を撤回せざるを得なくなった。

 この時は、自動車等に100%もの追加関税をかけられた日本はたまらずにセーフガード措置を撤回することになったが、トランプのアメリカはどうするのだろうか。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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