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「原子力の看板」を下ろせない東芝

米事業で巨額の債務保証、福島第一原発の廃炉で重要な役割

片山修 経済ジャーナリスト、経営評論家

 「2008年に受注した4基の影響が大きかった。ウエスチングハウスを買収したことといえなくもない……」

原子力事業の失敗を公式に認める

記者会見を終え、会見場を出る東芝の綱川智社長(中央)=2月14日、東京都港区芝浦1丁目、
 東芝社長の綱川智氏は、2月14日の記者会見の席上、東芝が危機にいたった理由を問われて、そのように答えた。

 東芝が、原子力事業の失敗を初めて“公式”に認めた瞬間である。事実、“悪夢”は06年、原子力子会社ウエスチングハウス(WH)を6600億円で買収したことから始まる。

 08年のリーマン・ショックに加え、11年の東京電力福島第一原発事故によって、原子力事業は一気に逆風にさらされた。東芝は15年春に不正会計が発覚し、翌16年3月期にWH関連の減損2600億円を計上した。

 それから一年も経たないうちに、東芝は再び“死の谷”を迎えた。WHが15年に買収した原発建設会社CB&Iストーン&ウエブスター(S&W)の資産価値を見直した結果、7125億円の減損損失を計上。債務超過を乗り切るため、虎の子の半導体事業を4月に分社化し、その株式の過半を売却するところまで追い込まれた。

 ところが、存亡の危機にあるにもかかわらず、東芝は、「原子力の看板」を下ろさない。米国と中国で建設中の原子炉8基は建設を継続する方針だ。なぜ、この期に及んでなお、「原子力の看板」を下ろさないのか。いや、下ろしたくても下ろせないのが本当のところだ。

 というのは、東芝は、WHが米国で抱える原発建設で、親会社として7934億円の債務保証をしている。財政的余裕のない東芝は、巨額の債務保証に足をとられ、米国での原子力事業をやめたくてもやめられないのだ。

 とはいえ、かりにも今後、米国での原発事業で新たな巨額損失が発生すれば、WHの道連れになる。そこで、選択肢の一つとして浮上したのが、WHの米連邦破産法第11条「チャプター・イレブン」の適用の申請だ。裁判所の管理下で、堅調な保守、点検や燃料サービスを柱に、原発事業の再建を図るシナリオが考えられている。しかしながら、その場合、賠償請求が発生する可能性があり、思惑通りにいくかどうかは不透明だ。

全国の原発維持のためには、東芝は安易につぶせない

 もう一つ、「原子力の看板」を下ろせない理由に、福島第一原発事故をめぐる廃炉の問題がある。

 「国内の原子力事業については、再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に社会的責任を果たしていきます」と、綱川氏は語っている。

 東芝は、福島第一原発の2号機、3号機、5号機、6号機の主契約者である。このうち、メルトダウンした2号機、3号機の廃炉作業について、東芝は「社会的責任」を負っている。つまり、廃炉をめぐる国家的プロジェクトの重要な担い手である。東芝を抜きにしては、原子燃料と燃料デブリ取り出しなど、廃炉作業はありえない。

 さらに、全国に点在する44基の原発の維持管理、保守のためには、東芝を安易につぶすことはできない。

 経済産業相の世耕弘成氏は、2月14日の記者会見において、

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