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自由化や統合をめぐり、世界の歯車は逆転し始めた

榊原英資

グローバリゼーションの流れの中で

 第2次世界大戦後、世界は緩やかに統合とグローバリゼーションの流れの中で変化し始めた。

 ヨーロッパでは1870~71年の普仏戦争以来対立していたドイツとフランスが手を結び、欧州統合を進めていった。1957年にベルギー・フランス・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・西ドイツの6カ国によって、欧州経済共同体設立条約と欧州原子力設立条約が調印されたのだ。

 この条約はローマ条約と呼ばれ、1951年のパリ条約によって設立された欧州石炭鉄鋼共同体を引き継いだものだった。その後、1993年のマーストリヒト条約で欧州連合(EU)の創設が定められた。当初の6カ国以外も次々と参加し、2013年には当初の6カ国の他イギリス・アイルランド・デンマーク・ギリシャ等が参加し、28カ国が参加することになったのだ。

 EU28カ国のうち19カ国は共通通貨ユーロを使用し、又、金融政策も欧州中央銀行(ECB)により決定され共通なものになっている。EU28カ国のうち、共通通貨ユーロを導入せず、自国の通貨と金融政策を維持しているのはデンマーク・スウェーデン・イギリス・ブルガリア・チェコ・ハンガリー・ポーランド・ルーマニア・クロアチアの9カ国。

アメリカやアジアへも波及した統合の流れ

 統合の流れはアメリカ大陸にも波及し、1994年にはアメリカ・カナダ・メキシコによって北米自由貿易協定(NAFTA)が署名され発効したのだった。

 アジアではヨーロッパやアメリカ大陸のように条約締結による統合はなかったが、市場が主導する形で事実上の統合が進んでいったのだった。アジア開発銀行(ADB)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)等が開発途上国等に対する投資を進め、アジア諸国の連携を強めていったのだった。

 ADBの総裁は歴代日本人が務め、財務省財務官経験者等が就任している。現在の総裁は中尾武彦、2011~13年に財務官を務めている。他方、アジアインフラ銀行は2015年中国が主導する形でつくられ、現在の行長は金立群、元ADB副総裁、中国国際金融公司の会長も務めていた。

 日本の輸出入総額のトップは中国で、2015年には全輸出入総額の21.1%だった。2位はアメリカだが、3位は韓国、そして台湾、タイとアジアの国が続く。2015年アジア全体への輸出入は全体の51.1%だった。中国プラス香港は全体の24.1%、ASEANは全体の15.2%だった(いずれも2015年)。戦後70余年、グローバリゼーションと地域統合はヨーロッパでもアメリカ大陸でもアジアでも着実に進んできたのだ。

逆転の気配

ホワイトハウスで共同で会見するトランプ米大統領(右)とメイ英首相=1月27日、ワシントン、ランハム裕子撮影 拡大ホワイトハウスで共同で会見するトランプ米大統領(右)とメイ英首相=1月27日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 しかし、ここ2~3年、歯車が逆転し始めた気配がある。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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