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2050年の2大経済大国は中国とインドだ

世界経済は再び19世紀以前の状況に戻っていく

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

存在感を強めるインド

首脳会談の前に東京都内の経団連会館であった日本の経済団体主催の昼食会でスピーチするモディ首相=2016年11月拡大首脳会談の前に東京都内の経団連会館であった日本の経済団体主催の昼食会でスピーチするモディ首相=2016年11月

 4月10日から3日間、1年ぶりにインドを訪れた。投資銀行アベンダスの依頼で世界経済についての講義をすることが主目的だったが、インド準備銀行や政財界の旧知の人達と会うことができた。

 2015年に発足したナレンドラ・モディ首相のインド人民党(BJP)の政権は、諸改革がそこそこ順調に推移し、高い支持率を続け、このところの地方選挙でも国民会議派等野党に大差をつけて勝利している。ここ2~3年、7%台の成長率を維持し、中国が6%に成長率を低下させているなか、その存在感を強めている。

 かつては2桁台のインフレに悩んでいたのだが、前RBI総裁のラグラム・ラジャンの巧みな金融政策でインフレ抑制に成功し、現総裁ウリジット・パテルも引き続きうまくインフレをコントロールしている。

 現在のインフレ・ターゲットは4%、ここ1年ほどは4%以下のインフレを実現し、高度成長と低インフレとうまく経済金融政策をマネージしている。RBIは資源価格が底を打って再び上昇に転じている中で、モンスーンの影響が悪ければ、インフレが再燃するではないかとの懸念を強めているが、今のところ利上げには踏切っていない。4月の金融政策決定会合でも、政策金利は据え置いている。

インフレ再燃の可能性を意識する総裁

 インドは基本的には天然資源の輸入国。この数年の石油や鉄鉱石価格の下落のメリットを享受していた。しかし、こうした価格が底を打って反転してきたことで、前述したようにインフレ懸念が再び高まってきたという訳なのだ。

 しかし、パテル総裁もアチャリア副総裁もインフレ再燃の可能性を充分に意識し、政策運営にあたっていると明言している。今回は利上げはなかったものの、市場はいずれ必要に応じて金融引締め局面に入ることを予測している。

 パテル総裁は53歳、アチャリア副総裁は42歳。他国に比べてかなり若い中銀のリーダー達だ。ラグラム・ラジャン総裁以来、若い総裁・副総裁が続いている。ラジャン前総裁はシカゴ大学で長く教鞭(きょうべん)を取り、IMFのチーフエコノミスト等を務めた世界的に有名なエコノミスト。現在はシカゴ大学に戻り、再び教鞭を取っている。パテル総裁もアメリカ在住が長く、ニューヨーク大学で長く教えた経験を持つ。インドにもIIT等超一流の大学・大学院があるが、アメリカでの経験が高く評価されているようだ。

 事実、アメリカの金融界等では多くのインド人達が活躍している。長くアメリカに住んでいる人達が多いのでアメリカ国籍も持っているインド人が多いが、こうした人達が、今や、故郷のインドに帰って、中央銀行や民間銀行・証券会社等で活躍し始めているのだ。

NRIと呼ばれる人々

 外国で活躍するインドの人達はノン・レジデント・インディアン(NRI)と呼ばれていた。インドには住まず外国で職業について仕事をしている人達だ。金融エリート達だけではなく、多くの労働者たちもアラブ諸国や東アフリカ諸国に出かけ仕事をしてきているのだ。

 東南アジア等で活躍している中国人を華僑と呼ぶが、こうしたNRI達は印僑とも呼ばれている。中国人達が出かけていったのは東南アジアまで。インドとインドから西はインド人・印僑達が活躍してきた舞台なのだ。こうした印僑達がアメリカからのみではなく、アラブやアフリカ諸国から戻ってインドで仕事をし始めている。

 インドはかつては社会主義国家だった。民主主義は浸透していたが、経済は計画経済システムだったのだ。これを大きく変えたのが1991年の新経済政策。後に総理大臣になるマンモハン・シン財務大臣が市場経済へと大きく舵(かじ)を切ったのだ。中国が共産党独裁という政治システムは維持しながら市場経済へ移行したのも1990年代。1990年代から中国とインドの経済成長率は急速に高まっていったのだった。

 1980年から2010年のほぼ30年間中国は年平均10%に近い高い成長率を維持したし、インドの成長率も6~7%に上昇していったのだ。ただ、中国は次第に人口減少局面に入り、老齢化も進んで成長率を低下させてきた。2011年以降は7%台に、2015年には6%台まで成長率が下ってきている。

 しかし、インドは人口が増加し続け、人口構成も若い。2015年には成長率は7%台に達し、中国を成長率で上回ることになったのだ。インドの7%成長は2017年に入っても続いている。中国と違って人口が増加し続けていることがその背景にある。

人口が増え続け、人口構成も若いインド

 国連の予測によると2050年には中国の人口は13億人を切るが、インドの人口は16億人に達するという。現在は中国の方がインドより人口が多いが、2025~30年には逆転してインドの方が人口は多くなる。しかも人口構成は若い。中国が次第に成長率を低下させていくのに対し、インドはしばらくは7%台の成長を続けていくと予測されているのは、この人口動態を背景にしてのことだ。

 プライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)の予測によると、2015~50年のインドの年平均成長率は4.9%と中国の3.4%を大きく上回る。そして、こうした高成長の結果、2050年にはインドのGDPがアメリカの成長率を上回るというのがPwCの予測なのだ。

 2050年の2大経済大国は中国とインド。世界経済は再び19世紀以前の状況に戻っていくという訳だ(1820年の世界のGDPの29%は中国、16%はインドだった)。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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