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シビル・パートナーシップ制を求める異性カップル

結婚を嫌って訴訟を起こす英国の人々は、伝統にとらわれない新しい結びつきを望む

小林恭子 在英ジャーナリスト

 英国で同性カップルにのみ認められている「シビル・パートナーシップ制」を、異性カップルにも認めるべきだとして、ある男女が訴訟を起こしている。2月、控訴院でその訴えは退けられたが、最高裁まで戦うつもりだという。なぜ、2人は結婚よりもシビル・パートナーシップを志向し、裁判にまで至ったのだろうか。

シビル・パートナーシップとは

英国では2005年から、同性同士のシビル・パートナーシップ制が導入されている(オックスフォード州による手引書の表紙)拡大英国では2005年から、同性同士のシビル・パートナーシップ制が導入されている(オックスフォード州による手引書の表紙)

 英国では、2005年12月から、同性カップルが異性間の婚姻に準ずるものとして、「シビル・パートナーシップ(市民パートナーシップ)」を結ぶことができるようになった。2人の人間が結ぶ新しい法的関係で、シビル・パートナーシップ法(2004年)に基づいて成立したものだ。

 結婚と比べると、遺産相続や税金、年金、最近親者として扱われることなど、シビル・パートナーシップには結婚と同等の権利と義務が付与されるが、大きな違いは、シビル・パートナーシップは同性カップルが対象となることと、そして宗教性がないことだ(一部地方では現在までに宗教施設での登録儀式も可能になった)。

 英国では、結婚は、異性カップルによる法律上の関係であるとともに、宗教儀式としても認識されてきた。その背景には、同性愛者同士の結婚を認めると結婚制度そのものが揺らぐことを恐れる、キリスト教関係者や国民の反対・懸念があった。

 そこで、同性カップルに結婚を認める一歩手前の段階として、「非宗教的な場所で結婚式を行う」、「同性カップルのみに限る」などの条件を付けた上で、シビル・パートナーシップ制が実現したという経緯があった。

 その後、英国で同性婚が認められたのは2014年12月である。ただし、現時点で北アイルランド地方では認められていない。

異性カップルなのにシビル・パートナーシップを求める

署名サイト「チェンジ・org」の画面。左上がチャールズさんとレベッカさん拡大署名サイト「チェンジ・org」の画面。左上がチャールズさんとレベッカさん

 異性カップルとして、結婚よりもシビル・パートナーシップを望む男女がいる。ロンドン在住のチャールズ・ケイダンさん(39)とレベッカ・ステインフィールドさん(34)だ。2人はシビル・パートナーシップの、異性カップルへの適用を求めて、最高裁に訴えを起こす予定だ。

 これまでの報道や2人が書いた新聞記事などによると、チャールズさんとレベッカさんが出会ったのは、2010年。ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスで開かれたある政治イベントで初顔合わせしたという。

 いつしか交際が始まり、2013年、2人はその関係を正式なものにしたいと考えた。レベッカさんは学者で、チャールズさんは雑誌の編集者。互いに仕事を持ち、育児も家事も平等に負担しあうパートナー同士である。生まれた娘イーデンちゃん(現在1歳半)の名前を、2人のファミリー・ネームをくっつけて「(イーデン・)ケイダンステイン」とするほど、平等への思いは強い。

 そんな2人にとって、結婚は、自分たちの意思が十分に投影されない仕組みに思えた。他方、レベッカさんには、結婚式へのあこがれはあった。きれいなウェディングドレスを着て、家族や友人から祝福されることを夢見ることもあった。それでも、結婚にはどうしても踏み切れなかった。

 チャールズさんもレベッカさんも、「結婚したら、こうあるべき」という周囲の期待やプレッシャー、伝統を引きずりたくなかった。平等な法的権利と責任が伴う、かつ社会的に認められる結合の形を望んでいた。そんな2人が理想としたのはシビル・パートナーシップ制度だった。

市役所では門前払いに

 2014年10月、チャールズさんとレベッカさんは市役所に向かい、シビル・パートナーシップを結ぶ意思があることを示す書類を提出した。しかし、異性カップルであるため、こうした書類を提出する資格がないとして、門前払いをされてしまった。

 「なぜ、社会のあるグループに保障されている権利が、ほかのグループにいる人には認められないのだろう?」という疑問がわいてきた。

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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