地域の行政、社会、福祉、商工、交通、住民が連携して創意工夫を
2017年07月05日
少子高齢化の進展にともなって、日常の買い物に困難を感じる人々の存在が「買い物弱者(買い物難民)」問題と呼ばれ、社会問題となっている。農林水産政策研究所の平成24年調査によれば、買い物弱者は国内に約910万人以上存在しているという。本稿では、この「買い物弱者」問題について、その現状と課題、今後の展望について論じてみよう。
「買い物弱者」問題の発生には様々な要因があるが、その最も根底にあるのは地域の高齢化と過疎化である。地域で高齢化・過疎化が進むということは、地域全体で売れる商品の量と金額が縮小していくことに他ならない。こうした地域の需要縮小に耐えられないスーパーや商店が閉店してしまうと、そこを利用していた高齢者の多くが買い物弱者となってしまう。また、特に地方部で顕著であるのが、高齢化による自動車運転免許の返納や、自家用車の運転の取り辞めを契機に、買い物に不便をきたしてしまうケースである。さらに、地域内にあった日用品販売店などが店主の高齢化によって廃業してしまう、といった売り手側にも高齢化の影響がみられる。
買い物弱者問題は、自家用車が移動手段の中心であり、自宅から買い物場所までが遠い農山漁村や中山間地域などで問題視されてきた。しかし、最近では都市部においても、エレベーターの無い団地や、地価が高騰し、店舗が出店できない住宅地等を中心に、この問題が顕在化しつつある。自宅で農産物を栽培していたり、地域のコミュニティーの強度が強かったりする地方部よりも、むしろ、住民間の関係性が希薄な都市部の方が深刻な問題を抱えているケースも少なくない。
加えて、それぞれの個人の身体的状況や生活環境によって、買い物に感じている不便の質が異なり、住民が求める対応策も異なる点に注意が必要だ。例えば、公益財団法人流通経済研究所で過去に実施した調査では、自家用車を持ち、実際の店舗に高頻度で買い物に行ける住民の方が、自家用車を持たず、買い物頻度が低い住民よりもカタログ注文方式の宅配サービスを希望する割合が大きかった。これは、普段、買い物に十分に行けていない住民の方が「自分の目で見て商品を選ぶ」というニーズが強いため、実際の商品を見ることができないカタログ注文の宅配サービスを求めなかったことが理由である。
流通経済研究所では、「買物支援プロジェクト」として、農水省の補助を受けながら、6年ほど前から買い物弱者への対策をする地域への支援を行ってきた。このプロジェクトでは、必要に応じて住民の生活状況についてのアンケートを行いながら、地域ごとに買い物弱者への対策を考えていくための協議会(検討体制)を構築し、当該地域に適した対策方法の検討を支援するものである。地域によっては、協議会の検討結果を踏まえて民間事業者を巻き込み、実証実験を実施し、取り組みの地域内での定着化までを実現した地域もある。
こうした行政も含む、地域内の様々な事業者を巻き込んだ検討体制を作ることは、
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