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チーズの値段は下がらない

日EU自由貿易協定合意の効果と評価

山下一仁

チーズの輸入も増えないかもしれない

EUのトゥスク大統領(右)と共同記者会見する安倍晋三首相=7月6日、ブリュッセル、代表撮影  

拡大EUのトゥスク大統領(右)と共同記者会見する安倍晋三首相=7月6日、ブリュッセル、代表撮影

 日EU自由貿易協定交渉が大枠でまとまった。〝大枠〟というのは、TPP交渉で使われた〝大筋〟合意という内容と異なり、まだ細部では詰める余地がある、実質的な交渉はまだ残されているという意味だそうだ。

 今回はチーズの関税の扱いが焦点となった。

 交渉の結果は、ゴーダなどのハード系のナチュラルチーズは、TPP(環太平洋経済連携協定)合意と同様撤廃する、カマンベールやモッツァレッラチーズなどのソフト系のナチュラルチーズについては、関税は撤廃しないで低関税の輸入枠を設け、その輸入枠を使って輸入されるチーズの関税を16年かけてなくすというものだ(輸入枠についての当初の関税の水準は公表されていない。まだEUと合意していないのだろう)。

 EUは一定の数量までは低い関税で輸出できるが、その量を超えると29.8%というこれまでと同様の関税が適用されるということである。

 その輸入枠については初年度2万トン、16年目に3.1万トンにする。現在EUからのナチュラルチーズの輸入量は6.8万トン、そのうち明らかにソフト系と思われるフランス、イタリアからの輸入が合計1.8万トンであることからすると、それほど大きな量ではない。

 これによってチーズの小売価格が下がるという解説報道が行われている。残念ながら、そのようなことは起きない。それどころか、チーズの輸入は増えないかもしれないのだ。

どのやり方でも消費者価格は下がらない

 輸入枠というは、それを使って輸入する業者が低い関税(たとえば10%)を払うだけで済むというものである。

 この輸入枠というのは、どのようにして業者に配分されるのだろうか?

 これまでの輸入実績に応じて配分したり、政府の窓口に来た者順に配分するという方法と、政府が入札を行い、高く応札した業者から配分するという方法がある。どのやり方でも消費者価格は下がらない。

 説明しよう。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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