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2017年は景気回復の年

アジアの新興市場国がしばらくは世界経済の牽引役を引き受けていくだろう

榊原英資

IMFの見通しは

 IMF(国際通貨基金)は2017年4月18日に公表した世界経済見通し(WEO)で、2017年の世界経済全体の成長率を3.5%と前年の3.1%から大きく引き上げた。

 先進国の成長率は2.0%と前年比0.3%の上昇。特にアメリカ経済が好調で、前年より0.7%高い2.3%で成長するとされている。英国・カナダも2.0%、1.9%と前年を大きく上回っている(2016年はそれぞれ1.8%、1.4%)。ちなみに日本は1.2%と2016年の1.0%から若干の上昇が見込まれている。

 新興国も順調で、2017年の成長率は4.5%と、前年比0.4%の増加になっている。資源価格が反転したことで(WTIの原油価格は2016年1バレル42.23USドル、2017年の予測は51.05USドル。鉄鉱石価格は2016年1トン58.57USドル。2017年の予測は1トン77.77USドル)、資源輸出国の成長率がマイナスからプラスに転じることになった。

ロシア、中国、インドの成長率

 ロシアの成長率は、2015年にはマイナス2.84%、2016年にはマイナス0.25%、2017年にはプラス1.40%に転ずると予測されている。ブラジルは2015年にマイナス3.77%、2016年はマイナス3.60%だったが、2017年にはプラス0.17%になるとされている。2018年に入ると、ブラジルはさらに1.7%まで成長率を上昇させるというのがIMFの予測だ(ロシアは2018年は1.4%)。

 1980年から2011年まで年平均で10.0%前後の成長を続けた中国は、2012年に7%台に、そして2015年には6%台に成長率を落としている。高度成長期は終焉(しゅうえん)し、安定成長期に入ったのだが、うまく軟着陸できるかどうか注目しておく必要があるのだろう。IMFは2017年には6.6%、2018年には6.2%まで成長率が低下すると予測している。

 同じ新興国でも、逆にインドは成長率を上昇させている。1980年~2011年の年平均成長率は6.22%だったが、2014年には7.18%と7%台に乗せ、その後平均7%前後の成長を続けている。IMFの2017年の予測は7.2%、2018年の予測は7.7%だ。

2050年の経済大国ナンバー1は中国

 中国とインドの成長率は2015年に逆転し、その後はインドの成長率が中国のそれを上回っている。プライスウォーターハウスクーパーズ(PwC)の予測によると、2015~50年の年平均成長率は(実質GDP)インドが4.9%なのに対して、中国は3.4%になっている。

 それでも2050年のナンバー1の経済大国は中国で、PwCの予測によるとPPPベースで58兆990億米ドル、インドは米国を抜いてナンバー2に躍進し、44兆1280億米ドルを達成するとされている。

 ちなみに、日本はナンバー8、2016年のナンバー4からかなり下っている。中国・インドに次いでGDPが日本より高いのは、米国・インドネシア・ブラジル・ロシア・メキシコだと予測されている。

 2050年には中国とインドが2大経済大国という訳だが、実は、19世紀以前は両国はナンバー1・ナンバー2の経済大国だったのだ。アンガス・マディソンの推計によると、1820年時点で世界のGDPの28.7%は中国、16.0%はインドと両国で世界のGDPのほぼ半分を占めていたのだ。ちなみにこの時点での英国のシェアは5.2%、米国のシェアは1.8%だったのだ。

中国とインドは「再興市場国」

 歴史をさらにさかのぼると、両国のシェアは次第に増加し、1500年(AD)前後には両国で世界のGDPの70%近くを占めていたと推計されている(アンガス・マディソン著・金森久雄監訳、「世界経済の成長史、1820~1992年」・東洋経済新報社・2000年)。

 つまり、中国とインドは新興市場国(emerging nations)ではなく、再興市場国(reemerging nations)
という訳なのだ。

 中国・インドに加え、ASEAN諸国も今後成長率を高めていくと予測されている。

 ASEAN諸国の成長率は2016年は4.9%だったが、2017年には5.0%、2018年には5.2%と順調に成長率を高めていくとされているのだ。世界の中で現在最も成長率の高いのがアジアの新興市場国なのだ。

 この地域は2016年6.3%の成長率を達成したが、今後とも6%台の成長を維持していくとされている。

 今後のポテンシャルといった意味ではアフリカ諸国も有望なのだが、成長率はまだまだ低く2016年でサハラ以南のアフリカ諸国の成長率は1.6%、2017年、2018年と2.8%、3.7%と成長率を高めていくと予測されているが、アジアの新興市場国をまだまだかなり下回っている。

 アンドレ・グンダー・フランクは「リオリエント―アジア時代のグローバル・エコノミー」(藤原書店・2000年)の中で、世界経済の中心は次第にアジアに戻ってきていると論じたが、まさにそれが加速度的に進んできているのが21世紀だということができるのだろう。

 今回の世界経済の景気回復局面でもその中心的役割を担うのが、中国・インド・ASEAN等のアジア諸国なのである。成熟先進国の成長率は、景気回復局面でもせいぜい2%前後。6%を上回る成長を続けるアジアの新興市場国がしばらくは世界経済の牽引(けんいん)役を引き受けていくことになるのは確実だろう。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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