走り出す産業界、消えない購入者の懸念
2017年09月25日
日産が新型のEV(電気自動車)「リーフ」を10月から発売する。航続距離は従来の1.4倍の400キロ。充電器も全国で2万8千基に増え、使い勝手は良くなった。価格も315万~399万円に抑えてある。今や欧米も中国も「EV革命」の覇権を握ろうと動き始めている。
しかし、リチウムイオン電池がEVの最大の弱点であることに変わりはない。電池のコストは車代金の約3分の1を占めるほど高価だが、数年で性能劣化が目立ち始め、丸ごと新品に交換するには、多額の費用がかかるからだ。
ところが、メーカーのカタログには、電池の寿命や交換費用について詳しい説明がほとんど記載されていない。これはリーフに限らず、三菱の「iMiEV」も、BMWの「i3」も米「テスラ」も同じ。購入数年後に当初の航続距離が裏切られる不安を残したままのブームは、いずれ消費者の離反を招く恐れがある。
新型リーフ発表は実にいいタイミングだった。
英仏は7月、ガソリン車やディーゼル車の販売を2040年以降禁止する方針を打ち出した。英ジャガーやスウェーデンのボルボは20年以降に販売する車をEV、HV(ハイブリッド)、PHV(プラグインハイブリッド)に絞るという。独メーカーで発覚した、ディーゼル車の組織的な排ガス不正がきっかけになった。
米カリフォルニア州は、メーカーに対しエコカー生産を課す「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制」の強化に2018年から乗り出す。EVを重視し、HV(ハイブリッド車)は外す――このルールが米国全体の基準になる。
自動車市場が世界最大(年間2800万台販売)の中国は、「新エネルギー車(NEV)政策」の下、EVの販売比率を2018年から強制的に順次引き上げ、20年代初めには、販売台数を今の5倍の年200万台にする計画。この方針に沿って、ガソリン車のナンバー取得を厳しく規制する一方、EVは規制対象から外している。
中国がEVシフトを敷くのは、環境対策が表向きの理由。しかし本音は「新分野であるEVメーカーを育成して自動車強国になり、日米欧の巨大メーカーの覇権を奪取したい」という野望に他ならない。
昨年、4輪車は世界で約9500万台売れた。EVはうち約50万台(0.5%)だったが、23年には360万台に成長するという予測がある。どのメーカーも「世界1、2位の市場である中国と米国がEVを選ぶ以上、生き残るにはEVをやるしかない」と腹をくくっている。
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