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欧州で移民・難民問題が最重要政治課題として浮上

この問題に対する政策で各国の選挙結果は大きく左右されている

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

「この国の変化の時が来た」

ウィーンで10月15日夜にあった国民党の勝利集会で演説するクルツ氏拡大ウィーンで10月15日夜にあった国民党の勝利集会で演説するクルツ氏

 2017年10月15日に行われたオーストリア総選挙で、セバスチャン・クルツ外相が率いる中道右派の国民党が勝利し第1党に躍り出ることになった。

 国民党が全投票数の31.9%を獲得し、クリスチャン・ケルン首相が率いる中道左派・社会民主党は26.9%と第3党の自由党の26.0%をわずかに上回ったに過ぎなかった。緑の党が12.4%、オーストリア・リベラル党が5.0%。第1党になった国民党のクルツ外相が首相に就任することになる。

 クルツ氏は31歳、世界最年少の国家指導者になる。クルツ氏は支持者を前に、「この国の変化の時が来た。今日、この国を変えるよう強い要請があったということ。これを可能にしてくれた皆さんに感謝する」と述べた。

 クルツ氏は2013年、わずか27歳で最年少の外相に任命され、選挙前まで務めていた。2017年5月に国民党党首に就任、「ブレンダーブッチ」(「氷の上を歩ける人」の意味)のニックネームで知られるクルツ氏は、フランスやカナダの若い指導者であるエマニュエル・マクロン大統領やジャスティン・トルドー首相とよく比較されている。

移民問題が主な争点

 選挙は移民問題が主な争点だった。クルツ氏はより右寄りの政策を国民党内で推し進め、欧州への移民の流入経路の閉鎖や難民への社会保障支払いの上限設定・社会保障の受給に国内での居住5年以上を条件にすることなどを選挙公約にして保守派や右派有権者に訴えたのだった。

 難民の流入阻止を訴える右寄りの自由党も躍進、中道左派の社会民主党の得票にせまった。国民党は第1党にはなったものの過半数の議席にはとどかず、自由党との連立に踏み切ることになる。クルツ氏はEU加盟国で最年少の首脳となったのだ。

 中道右派の国民党の勝利、そして自由党の躍進は移民・難民の大量流入を受けた有権者の強い不満が示されたものだと言われている。国民党は難民に対して厳しく、右派の自由党も難民阻止の立場だ。

 難民問題に揺れているのはオーストリアだけではない。2016年6月23日に行われた国民投票で、デイビット・キャメロン前首相がEU残留を強く求めたのに対して、英国民がEU離脱を選択したのも難民問題がその原因だとされている。

ドイツ、フランス、イタリアの対応

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は難民を歓迎し、ドイツに受け入れる方針を2015年8月に表明しているが、2016年3月にはドイツが欲しいと思わない移民をEUの他の加盟国が受け入れるべきだと発言。若干、そのスタンスを変え始めてきている。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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