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終活ビジネスの答えは「自分らしく生きる」こと

超高齢社会を背景に活況を示す業界 死に備え、その人らしい生をサポート

増澤貞昌 (株)鎌倉新書「いい葬儀マガジン」編集長

 人間、高齢になれば「自分の人生の最期をどう締めくくろうか?」と考えるのは当然のことだ。日本の高齢人口が増えるに伴い、自分の人生の最期について想いを巡らせる人もまた増えてきている。高齢者だけではない。高齢者がいる家族にとってもまた、「その時」をどのように迎えるのか、明確な答えを持っている人は少ない。まさに、「人生の終末にどう備えるのか」は国民的な課題になっているといえる。

 「終わりに備える」といえば、具体的な活動としては、現在持っている資産・財産の整理や、相続・遺言の準備。そして、葬儀・お墓の手配などが挙げられる。これらがまとめて「終活ビジネス」と呼ばれており、いままさに活況を迎えている。

 終活市場が伸びるにあたって、どう変化しているのか? 終活ビジネスが求められる社会的背景と、現在抱えている課題、今後の見通しといったことについて、まとめた。

①活況を迎える終活ビジネス

 まず、終活ビジネスについて、体系的に整理したい。

 終活ビジネスは、生の進展によって、提供されるサービスが変わる。したがって、時系列に整理すると分かりやすい。

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 まだ対象者が元気なうちは、生前の整理や断捨離といった、日常の大掃除の延長線上にある。「死ぬまでに一度は行きたいところに行く」といったシニア向けの旅行サービスなども広い意味では終活にあたるだろう。

 同時に、遺言やエンディングノートといったことも、意識がはっきりしているうちに準備をしておくことが望ましい。認知症になるなど、意思決定が難しい状態になってからでは十分な準備ができないからだ。

 遺言・エンディングノートでは司法書士が活躍するほか、民間資格のカウンセラーもいる。

 介護が必要な状態になり、施設などへ入居することなどが具体的に検討されるようになると、家族は受け入れ先を探す必要がある。家族に代わって、そういった施設の紹介・斡旋を行う事業者が不動産関連事業者を中心に次々に出てきている。これも、終活ビジネスのひとつといえよう。

 さらに、対象者の最期がいよいよ近づいてくると、相続の準備が始まる。墓地については最近は生前に自分で決める方がかなり増えてきた。一方、葬儀については、事前に相談するメリットが大きく、葬儀社もこぞって事前相談に力を入れている。

 実際にご逝去されると、そこからは税理士に相続税申告の手続き、仏壇・仏具の準備や、供養・法事といった流れにつながる。相続に伴い、不動産や中古車といった財物の処分があり、残念ながら相続で揉めてしまった場合には弁護士の出番だ。

関係する業種は拡大する一方

 このように、終活といっても実に様々な業種・職種が関係しており、対象者の増加につれ、ますます関係する業種が様々に広がりを見せている。日々色々なプレイヤーが終活市場に乗り込んできており、その流れはもはや止められないところに来ている。

②「2025年問題」と終活ビジネス

 終活ビジネスが広がっている大きな背景に、「2025年問題」がある。

 現在、約800万人いると言われる団塊の世代(1947年生まれから1949年生まれ)の人口が、一斉に後期高齢者に入るのが、ちょうど2025年。この年、日本は国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、かつてない超々高齢化社会に突入する。

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 現在、日本人の健康寿命は男性が71歳、女性が74歳。健康寿命を超えると約半数の人が、生活にあたってなんらかの健康上の支障が出てくるとされている。2025年には、団塊の世代をはじめとした人口のボリュームゾーンが一斉に健康寿命を超え、社会保障の負担が増えることが予想されており、これが「2025年問題」と呼ばれている。

 高齢者を年齢でくくるのは簡単だが、実際には人ぞれぞれ、事情は大きく異なる。80歳でも健康な人がいる一方、それよりもずっと若い年齢で、寝たきり状態を強いられる人もいる。

 経済状態も人それぞれだ。日本の個人貯蓄の8割は高齢者が保有しているといわれているが、一方で、高齢者の6割近くが何の蓄えもなく、今後が不安だとしている。(内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成27年))

 こういった現状を踏まえて、終活サービスも多様化、細分化している。

 例えば、お墓を例に取ると、従来の「お寺」「霊園」といったお墓に加えて、海に「散骨」するサービス、自然に還ることをテーマとした「樹木葬」、お骨を手元においておく「手元供養」やジュエリーへの加工、お骨の一部を宇宙で散骨する「宇宙葬」など、細かいニーズに対応した様々な商品が打ち出されている。

③終活ビジネス業界が抱える課題

 このように、様々なプレイヤーが次々に参入し、活況を見せている終活ビジネス市場だが、一方で課題もある。

「単価の下落」

 課題の一つは「単価の下落」だ。

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 葬儀においては、平均費用がここ数年で顕著に下落している。理由は簡単で参列者が減少しているからだ。高齢化が進むことで、長寿にはなったが、健康寿命と実際にお亡くなりになる年齢との間に10年近くものの開きが出来た。そのため、いざ、葬儀となっても縁故のあるものはすでに亡くなっているか、存命中であっても健康上の理由で葬儀に参列できないことも多くなってきた。また、個人の子供世代にあたる「喪主世代」も60歳を超えてすでに現役を退いていることも、参列者が少ない理由の一つとなっている。

 葬儀の実施にあたっては、やはり参列者数が多いほど、規模も金額も大きくなり、施行単価が上がる傾向にある。死亡年齢が高くなれば、参列者数は少なくなり、葬儀単価が減るのは必然の流れともいえる。

 葬儀だけではなく、お墓や仏壇、仏具においても小型化・低単価志向になっていることは否めない。お墓で言えば、お寺の境内や広い霊園にお墓を建てるより、小さく、管理の手間のかからない永代供養墓が人気になってきている。当然、以前よりも単価は下がっている。そもそも、「自分のお墓は不要」という声も3割近くになってきた。
いい葬儀マガジン「パートナーとの死別に関する調査」

 仏壇/仏具についても、 ・・・続きを読む
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筆者

増澤貞昌

増澤貞昌(ますざわ・さだまさ) (株)鎌倉新書「いい葬儀マガジン」編集長

大学卒業後、(株)リクルートを経て、複数のITベンチャーを経営。WEBサイトの構築・運営に15年以上のキャリアを持つ。2013年より鎌倉新書にて、供養業界のWEBマーケティングのコンサルティングを行う。デジタルメディア白書(経済産業省)の編集委員等も歴任。