誰が「自民党にそっくりの反自民の政党」を必要とするのだろうか
2017年11月08日
10月22日投開票の衆議院議員選挙で希望の党が惨敗した。政権交代の実現を謳(うた)って235人の候補者を擁立した希望の党の獲得議席数は、現有議席の57に対し50に終わった。
民進党から希望の党に移籍した現職議員45人に限って見れば、このうちの当選者は26人に過ぎない。ちなみに、他の民進党現職議員では、立憲民主党に移籍した16人は全員が当選し、無所属で出馬した20人のうちの17人が当選した。現職議員の落選率は、希望の党移籍組が圧倒的に高い。
希望の党惨敗の原因は、小池氏の「排除」発言にあるというのが定説になっている。確かに「排除」という言葉の響きから、この言葉に反感を持った人が多くいたとしても不思議ではない。
だが本当に、この小池氏の「排除」発言による逆風だけが惨敗の理由なのだろうか?
私は3年前の総選挙の際に、拙稿「自民党の圧勝には明白な理由がある!」(2014年12月15日)で、経済状況、とりわけ雇用状況が良いときには、政権与党が選挙で負けたケースがないことを論じた。
前回選挙の時点での失業率は3.5%で就業者数は6,355万人であったが、足元の失業率は2.8%で数業者数は6,596万人と雇用状況はこの3年間で更に大きく改善している。今回の選挙結果も、これで説明できるのだ。
この総選挙の自民党の得票数と得票率を前回(2014年)と比較すると、小選挙区の得票数と得票率は26,500,722及び47.8%(前回は25,461,488及び48.1%)、比例代表の得票数と得票率は18,555,717及び33.3%(前回は17,658,916及び33.1%)となり、自民党への支持が前回の総選挙と全く変わっていないことが分かる。いわゆる「森友・加計問題」に端を発する安倍首相への支持率低迷にもかかわらず、有権者は政権交代を望んでいなかったということだ。
結果はこの通りだが、ここで、この選挙で起きたこととその含意を整理しておこう。
9月28日、衆議院の解散・総選挙を受けて、民進党の前原代表は両院議員総会で、①民進党は今回の総選挙で候補者の擁立は行わず、②公認予定者は3日前に設立されたばかりの「希望の党」に公認申請を行いその交渉は代表に一任、③民進党は総選挙で希望の党を全力で応援する、旨の提案を行い、これが全会一致で承認された。
公党の代表である前原氏の「自党は候補者の擁立は行わない」という奇策が両院議員総会の全会一致で承認されたことは何を意味するのか? その場の全員が「民進党では選挙に勝てない」ことを認めていたということではないのか?
国会で、いくら「森友・加計学園疑惑」を追求しても、(安倍首相への支持率低下にもかかわらず)自民党への支持率は低下せず、民進党の支持率は一ケタ台の低迷を続けたからだ。
「このまま選挙に突入するとどうなるのか? 選挙の追い風は、3日前に設立されたばかりの希望の党に吹くだろう(7月の都議会議員選挙の悪夢が脳裏をよぎる)。民進党からは離党者が続出する。選挙前の90議席が半減してもおかしくない。」 民進党の現職議員がこのように考えたことは容易に想像がつく。
総選挙にあたり、民進党・前原代表の最大のミッションは自党の公認予定者をできるだけ多く当選させることだ。そして、選挙の結果を見ると民進党系の候補者全体では実に108人が当選を果たしている。内訳は、立憲民主党55人、希望の党が36人(26人の現職に加え10人の新人・元職が当選している)、無所属が17人である。
選挙戦略に限って見れば、前原氏は成功したと言えよう。選挙後の民進党の議員総会では前原氏への不満が噴出したそうだが、彼らはむしろ前原氏に感謝すべきだろう。
「希望の党に合流する」というのは、これまでの民進党の公約をドブに捨てるということだ。
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