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広がる、中小企業支援の新しい形

「攻めの支援」へ転換、全国20地域以上に「売上アップ」に特化した相談所

秋元祥治 岡崎ビジネスサポートセンター長

拡大岡崎ビジネスサポートセンターの相談風景

地方創生は、地域の産業活性化がキモ

 「地方創生」というキーワードがスポットライトを浴びていますが、中でも重要なのは地域経済の活性化。その街に住む人が増えるためには、その街に仕事があり儲かる、ということが重要だからです。仕事のあるところに人が集まり、そして街になってきた…という成り立ちを考えれば至極当然なことのように思われます。

 では、地域経済の活性化に必要なことは何でしょうか。今ある会社を強くする中小企業支援か、今はない会社を新たに生み出すか。

1)企業・工場誘致
2)新規創業の支援
3) 既存中小企業の支援

 (1)企業・工場誘致や(2)新規創業の支援ももちろん重要です。しかし、そもそも工業立地が国内だけでなく世界的な視点で行われる中で、国内への工場進出は減少していること。加えて、各自治体が支援策(要は補助金や税減免ですね)を拡充し合い、いわば札束の叩き合いで熾烈な誘致競争をしている現状を、まず理解しなければいけません。

 さらに、機械化された工場は無人化が進み、地域に生み出す雇用は限定的です。また、補助金や助成制度の切れ目で、売却されたり他地域へ移転しまったり…という話すらよく耳にします。

 (2)新規創業の支援もまた、もちろん進めるべきです。ただし、統計を紐解けばすぐに明らかになる通り、今年100社創業したとしても、10年後に事業継続しているのはおよそ5社程度…。つまり90%以上は10年以内に廃業してしまっている、ということは事実としておさえる必要があるでしょう。

 また、新規創業というと、株式上場(IPO)をめざすベンチャー企業といったイメージを持つ人もおられるかもしれません。しかし、実際は、雑貨店やカフェ、ネットショップなど生活に密着した地域のスモールビジネスも多いのです。

 だからこそ今、より重視すべきは「地域に根づく既存中小企業をいかに活性化するか」ではないかと思うのです。1社で100名の雇用を生むことよりも、100社それぞれで1名ずつの新たな雇用を生んでいくことはできるのではないか、と考えます。

地域の小さな会社の「売上アップ」の応援が今、求められている

 地域に根ざした小さな会社を、いかに元気にしていくか。これまで中小企業には様々なニーズがあると言われてきました。技術指導や知財管理、財務分析などの専門家を揃えた公的な産業支援機関も全国各地に作られてきました。しかし、実際はその多くで、閑古鳥が鳴いているといわれています。

 中小企業白書に掲載されている、2012年に野村総研が行った中小企業に対する調査では、おおよそ65%の企業が「定期的経営相談相手はそもそもいない…」と答えています。相談相手を答えた35%の方々の、相談先も以下のとおりです。

拡大中小企業の相談相手に関する調査結果

 一方、同じ年に日本政策金融公庫によって行われた調査では、経営上の悩み・課題の多くは「売上アップ」に集中しています。筆者によるオレンジ色で囲んだものは、ズバリ売上アップを実現したいということにほかなりません。

拡大中小企業の経営上の課題に関する調査結果

 また、資金調達や借り入れなども、健全な形での売上アップが見込まれれば、おおむね解決される問題です。同じように設備投資や研究開発の加速には、資金手当が必要となります…が、これも売上アップを通じて解決していくことができるわけです。

 これらのデータから、中小事業者の大半は、売上アップに関しての悩みや課題を有している。しかし、相談をしたいと思っても、そもそも相談相手もない。実際、相談する相手がいる…とはいっても売上アップに専門性を有しているわけではない、のが現実だということが浮かび上がってきます

OKa-Bizに寄せられる相談は年間2500件以上

拡大岡崎ビジネスサポートセンターの相談員たち
 一方で、筆者が運営する岡崎ビジネスサポートセンター・OKa-Biz(オカビズ)は、3.7名/日の相談員配置ながら、1年間で2500件以上の相談が寄せられ、今も相談予約は約1カ月待ち。新たに相談に訪れる方の7−8割は口コミです。「OKa-Bizに行けば売上が上がるから」「スピード感を持ってサポートしてくれる」との評判が、さらなる相談者を集めています。

 OKa-Bizは、富士市産業支援センター・f-Bizをモデルに、2013年10月に愛知県岡崎市が主導し開設された公的な産業支援機関です。相談は1回1時間で、利用料は無料。最大の特徴は、中小企業や新規創業者の「売上アップ」に特化した支援を行っているということです。開設時より、筆者はOKa-Bizセンター長として多い日には、1日6件から7件の中小事業者の方々の個別相談に応じています。

 2016年夏に行われたアンケートでは、相談者の実に70.7%が、「OKa-Bizに相談して売上が上がった」もしくは「今後売上が上る見込みだ」と回答しています。

求められる「攻めの経営支援」

 これまで市町村単位の公的な産業支援機関での中小企業支援といえば、1)記帳などの会計支援、2)借入時の利子負担の一部補助、3)展示会出展時などの一部補助金 4)セミナーの実施、といったものが一般的でした。

 たしかに、高度成長期など経済全体のパイが拡大する時代においては、バックオフィス支援など「守りの経営支援」を行っていくことが重要でした。守りの経営支援を行っていきさえすれば、市場拡大の中で中小企業の各社は、売上をのばし事業拡大をしていくことができたからです。

 しかし、バブル崩壊以降、人口も減少に転じ、経済成長に陰りが出てきました。今後、本格的に縮小を始めるであろう日本経済においては、単に守りを固めていく経営支援ではなく、「売上アップ」という攻めの経営支援が、今まさに求められているのでは、と考えます。

 地域の中小企業に、共通するのは「お金がない」「ヒトがいない」「余裕がない」という状況。そんな中で、流れを変えていくのは、「知恵を出していく」こと。その知恵の出し手として、公的な中小企業相談所が求められているのではないか、と考えます。

 2012年に中小企業庁より出されたレポート「変わる中小企業、変われるか支援人材」でも同様の指摘があります。しかし、支援の現場ではまだまだ旧来型のサポートが中心だとの声も事業者からは聞かれます。

 私たちOKa-bizは、1時間じっくりとお話をお伺いする中で、以下のような観点から売上アップに向けた具体的な知恵出しを行います。できるだけ投資の発生しない、つまりお金のかからない打ち手を提案していきます。その上で、 ・・・続きを読む
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筆者

秋元祥治

秋元祥治(あきもと・しょうじ) 岡崎ビジネスサポートセンター長

1979年生まれ。早稲田大学教育学部・政治経済学部中退。2001年より、人材をテーマに地域活性に取り組むG-netを創業し03年法人化。16年5月末で代表理事を退任し、現在理事。また、中小企業支援をf-Biz・小出宗昭氏に師事し、13年・33歳でOKa-Bizセンター長に就任。4年で目標の3倍以上となる8,000件超の来訪相談・800件超のメディア露出・約150件の視察等、常設型自治体主導のf-Bizモデル全国初の事例として注目が集まっている。内閣府「地域活性化伝道師」等、公職も多数。