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憲法改正に真剣に取り組むべき時だ

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

占領下の日本国憲法

 安倍晋三総理大臣は憲法9条に自衛隊を明記する等の憲法改正案を提示している。

 現行憲法は1946年11月3日に日本国憲法として公布され、翌47年5月3日に施行されている。当時は占領下。日本側は国務大臣松本烝治を委員長とする憲法問題調査会を立ち上げ、1946年1月9日の第10回調査会(小委員会)に、松本が「憲法改正私案」を提出している。この私案には顧問として美濃部達吉、委員として宮澤俊義・佐藤達夫等が関わっている。その他にも、日本自由党(鳩山一郎総裁)、日本進歩党(町田忠治総裁)、日本社会党(片山哲書記長)、日本共産党(徳田球一書記長)等がそれぞれ憲法改正試案を作成し発表している。

 ただ、連合国軍最高司令官最高司令部(GHQ)はいずれの日本国案も「保守的」すぎるとして、マッカーサー三原則(ⅰ.天皇は元首・皇位は世襲 ⅱ.戦争放棄と陸海空軍は持たず ⅲ.日本の封建制度は廃止 具体的には華族の廃止等)を示した上で、民政局(GS局長はホイットニー准将)にその作成を命じたのだった。

 民政局は次長のチャールス・ケーディス大佐、アルフレッド・ハッシー中佐、マイロ・ラウエル中佐(運営委員会委員・3人ともハーバード大学卒・当時のGHQのブレーンだったと目される)等が中心となって、1946年2月4日から12日の9日間で日本国憲法を作成したのだった。

 占領下でもあったので、日本政府はこれを受け入れざるをえなかったが、ただ1点、その時、衆議院憲法改正特別委員長だった芦田均(1948年3月~10月に内閣総理大臣)の修正案を受け入れ、自衛のための軍隊(自衛隊)は持てるようになったのだった。具体的には憲法9条に「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し……」という文章と「前項の目的を達するため」という文章を挿入し、警察予備隊、さらには自衛隊を保有できるようにしたのだ。

改正されない憲法

自民党の細田博之・憲法改正推進本部長=11月10日午後、東京・永田町自民党の細田博之・憲法改正推進本部長=11月10日午後、東京・永田町

 日本国憲法はその後まったく改正されていない。戦後70余年、アメリカが18回、ドイツが51回、スイスが140回も改正したことに比べるとかなり異常な状況である。

 原因の1つは日本国憲法がいわゆる硬性憲法で、改正の発議には衆参両院それぞれの2/3の賛成が必要で、なおかつ国民投票で過半数が賛成する必要があるからだ。

 少なくとも、ごく最近までは、憲法改正を主張する政党が両院ともに3分の2以上を占めることはなかったのだ。例えば、日本社会党(1945~96年)は非武装中立をとなえ、護憲を公約に掲げていたのだった。ただ、現在は自民党に加え、維新・日本のこころ・希望の党が改正に賛成しており、慎重論を維持する公明党をとり込めば改正は十分可能な状況になってきている。

 こうした状況を踏まえ、安倍晋三総理は2020年には憲法を改正したいと表明している。共産党・立法民主党・社民党は今でも反対しているが、その数は3分の1を切っている。

改正すべきかどうかではなく、どう改正していくか

 筆者は日本国憲法は、当然、改正されるべきだと思っている。戦後70余年、世界の状況、日本をとりまく環境が大きく変化しているし、前述したように、他の先進各国も何度も改正を行っている。

 問題は改正すべきかするべきでないかではなく、どう改正していくかということではないだろうか。

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