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TPP11の次の一手は

アメリカにTPP復帰を求める必要はない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

TPP11協定署名へ

TPP首席交渉官会合の冒頭であいさつする茂木敏充経済再生担当相=1月22日、東京都新宿区TPP首席交渉官会合の冒頭であいさつする茂木敏充経済再生担当相=1月22日、東京都新宿区

 難色を示していたカナダが譲歩し、3月8日チリでTPP11協定に署名する運びとなった。とうとう日本が主導した大型の自由貿易協定(メガFTA)が発足する。同じく大型の日EU自由貿易協定も妥結しているので、日本は二つのメガFTAの参加国となる。日本はメガFTAを通じて、EU、カナダ、オーストラリア、メキシコなどの大きな経済とつながることになる。

 世界でこれ以外のメガFTAは、アメリカ、カナダ、メキシコが参加するNAFTA(北米自由貿易協定)しかない(域外の関税も統一する関税同盟にはEUや南米のメルコスールがある)。交渉中のものとしては、アメリカとEU間のTTIP、中国・インドも参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)があるが、前者は中断しているといってよい状況であるし、後者については日本も交渉参加国である。つまり、日本が世界のメガFTA交渉をけん引しているといってよい状況になっているのだ。RCEPが妥結すると、日本は中国・インド経済ともつながることになる。

 TPP11と日EU自由貿易協定はアベノミクスの成果だと評価してよい。2016年の段階では私のTPP11の主張に反対していた安倍政権が、トランプ政権発足後の昨年春に翻意し、TPP11交渉をリードして署名まで持って行った。日本が多国間交渉を主導するというのは、そんなにはないことだ。

アメリカにTPP復帰を求めるな

 しかし、今回のTPP11協定には不満な点がある。

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