「森林バンク」構想は機能するのか
2018年02月08日
林野庁や林業団体の関係者が口々に言うのは、森林環境税の創設のことだ。与党の税制改革大綱に明記され、国会も通過するのが確実なことを捉えた発言である。
国の森林環境税とは、市町村民税(個人住民税)に定額を上乗せして、森林整備に充てる財源を得る構想だ。使い道を限定しているから実質目的税である。今のところ年間一人当たり1000円を徴収して約620億円の税収を見込む。それを都道府県に1~2割、市町村に残りを配分する予定だ。配分額は、私有林の人工林面積、林業就業者数、人口の3つの基準をもとに算定するという。ちなみに導入は、重税感を和らげるため東日本大震災の復興経費として住民税に上乗せしている年1000円が切れるタイミングに合わせて24年度からを予定しているが、市町村などの要望が強いため配分は19年度より行う。それまでは総務省の借入金で賄う計算だ。
この税の目的は、地球温暖化防止策の一環として「条件不利地域の森林の整備等」を進めるためと謳(うた)っている。林業関係者にとっては、税収のほとんどが林業界に回ってくるわけだから大歓迎なのだろう。
「森林」や「環境」という言葉のせいか反対しづらい雰囲気が漂うが、子細に見ると幾つも問題点が浮かび上がる。改めて内容をチェックしたい。
まず森林環境税は、すでにあることをご存じだろうか。自治体が独自に創設した税金の形で存在するのだが、37の府県が導入している。2003年に導入した高知県を皮切りに、森林整備の財源として各自治体がつくったものだ。名称がほぼ同じ(自治体によって若干異なる)だけでなく、目的も同じ。徴収の仕方は府県民税への上乗せ方式(さらに法人から徴収する県もある)。すでに導入している自治体住民にとっては、国の徴税が決まったら二重課税になるだろう。また横浜市民にとっては、神奈川県の水源環境保全税のほかに市に同趣旨の税(横浜みどり税)があるから、三重課税されることになる。
いずれにしろ住民税に上乗せされるのだから人口が集中している都市部ほど税収額は多くなるが、配分は林業関係の数値が基準だから少なくなる。不公平感は拭えない。
肝心の使い道は適切なのだろうか。
それを考えるには、自治体版森林環境税の現状が参考になる。
たとえば長野県は「長野森づくり税」を2008年度から設けているが、5年ごとに見直しを行っている。今年度で2期目の施行期間が終わるため税制研究会に諮られたが、そこで指摘されたのが実質8億円の残高を抱えていることだった。年間約7億円の収入があるが、使い切れずに基金に積み立てていたのだ。昨年は大北森林組合が不正受給した2億円の補助金に、この森づくり税も含まれていたことも発覚して返還を求めている。
長野県は最終的に継続を決めたが、この税が森林整備に本当に役に立っているのか疑問符が付いたわけである。森林管理の目的に限るゆえ、
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