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[40]少女労災死が映す「働き方改革」の死角

危ない働き方に働き手が対抗するための労働権教育を未成年、外国人を問わず普及させよ

竹信三恵子 ジャーナリスト、和光大学名誉教授

 昨年12月、茨城県古河市の工場の屋根で太陽光パネルの点検・清掃を行っていた15歳のバイト少女が転落して死亡する事故があり、警察や労働基準監督署の捜査がなおも続いている。

 この事件はネットなどでは話題になったものの、年末のせわしなさの中で「バイトでの事故」として深く論議もされないまま、今日に至っている。だが、「働き方改革」の論議が国会で始まったいま、改めてその背景を眺めると、「改革」の死角に置かれたこの国の雇用の壊れ方が見えてくる。

「バイト」という名の児童労働

 事故は「 バイト15歳少女、工場で転落死 太陽光パネルを点検」との見出しで次のように報じられた。

 「古河市下大野の鉄工卸売会社「中央鋼材」古河工場で14日午前10時55分ごろ、石岡市東府中、アルバイト秋山祐佳里さん(15)が屋根から約13メートル下のコンクリート床に落ち、搬送先の病院で死亡した。

 古河署によると、秋山さんは屋根に設置された太陽光パネルを点検、清掃する仕事をしていた。屋根の上を歩いていたところ、天窓のガラス(金網入りで厚さ約6ミリ)が割れ、転落した。同署は、労働条件や安全管理の面で不備がなかったかについて、中央鋼材から点検作業を受注した会社などを調べる」(2017年12月16日朝日新聞デジタル)

 「バイト」という軽やかな言葉に覆い隠されているが、この事故は、実は国際条約で禁止されている児童労働そのものだ。ILOの「最低年齢条約」(138号条約)では働ける最低年齢は原則15歳(義務教育年齢)とされ、「最悪の形態の児童労働条約」(182号)では、18歳未満の危険な高所や閉所での労働などを「危険有害業務」として制限している。これらに違反した労働が「児童労働」だ。

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