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トランプ通商政策を「はさみ撃ち」にしよう

日本政府がやらなければならないのは、適用除外を求めることではない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

米中貿易戦争の始まり

集会で演説するトランプ米大統領=ペンシルベニア州ピッツバーグ、ランハム裕子撮影 拡大

 トランプ政権は戦後世界各国がこれまで積み上げてきた努力や成果を破壊しようとしている。

 80年代アメリカが発動した通商法301条などの一方的な措置をWTO(世界貿易機関)は否定し、WTOの紛争処理手続きを経なければ、対抗措置を取ってはならないこととした。今回アメリカはこれを無視し、知的財産権の侵害を理由として中国に対して一方的に報復関税を課すことにした。これに対し、中国はアメリカから輸入する豚肉などへ報復関税を課そうとしている。米中貿易戦争の始まりである。これで両国経済が疲弊すれば、影響は我が国にも及ぶ。

失敗した日本への鉄鋼関税の適用除外

 これと同時にアメリカは、自国の通商拡大法第232条を適用し、安全保障を理由として鉄鋼やアルミに対する関税を引き上げる。しかし、北米自由貿易協定(NAFTA)の2国(カナダ、メキシコ)、EU、韓国、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジルに対しては、適用しない。

 我が国政府は、日本は同盟国なので適用除外となるよう、アメリカ政府に働きかけていたが、完全な失敗に終わった。

 日本が輸出するような高品質な品目については、まだ適用除外となる道が残されているとし、仮に適用されてもアメリカ産業界は日本製品を買わざるを得ないので影響は少ないと、世耕経済産業大臣は発言しているが、これは負け惜しみに過ぎない。どうせアメリカが買わざるを得ないのなら、適用除外となるよう交渉する必要はなかったからである。

 韓国が適用除外となって日本がならないと言うのは、アメリカは日本を同盟国としては韓国よりも一段下に見ていることとなり、日米関係が何よりも優先すると考えている人たちには、大きなショックだろう。ある意味、日本外交の失敗である。 ・・・続きを読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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