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73万人が転職時に年金放置!総額2000億円に

新しい仕事で頭がいっぱい。年金まで気が回らない。忘れられた年金資産はどこへ

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

 

 転職した73万人の企業年金2000億円が放置され、塩漬け状態になっている。企業が運営する確定拠出年金(DC)について、転職時に必要な手続きを怠ったためだ。転職は増加傾向にあり、「宙に浮いた年金資産」はますます膨らみそうだ。

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6カ月以内に手続きしないと「塩漬け」に

 DCは厚生年金などの「公的年金」に上乗せされる「私的年金」の1つで、2001年10月に導入された。企業が掛け金を拠出し、個人が運用する。掛け金は税制上の優遇措置を受け、老後の給付額は個人の運用成績で増減する。企業単位で実施する「企業型」と、個人単位で加入する「個人型」がある。

 サラリーマンが離職や転職をする場合、それまで積み立てた年金資産を一時金として受け取るか、個人で掛け金を拠出せずに運用のみを続けるかなど必要な手続きをしなくてはならない。期限は退職月から6カ月だ。

 6カ月以内に手続きをしない場合、DCの年金資産は強制的に現金化され、厚生労働省が所管する国民年金基金連合会(国基連)に自動的に移管される。放置された資産は実質的な運用もされずに「塩漬け」状態になる。それまでに含み損がある場合、損失が確定してしまう恐れもある。

 放置された資産はメガバンクの預金として管理され、掛け金の追加拠出や運用の指図、年金給付の請求ができない。専用口座で管理された個人資産にもかかわらず、いわば宙に浮いてしまうのだ。

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 年金資産を放置しているのは、別の企業に転職したサラリーマンや、自ら事業を始めた自営業者ら。老後の年金資産として積み立てたものなので原則途中で引き出すことはできないが、資産額が一定額以下などの条件を満たせば脱退一時金として現金化は可能だ。

 条件を満たさない場合は、個人型へ切り替えるなど必要な手続きを6カ月以内に済ます必要がある。本人がこの手続きを怠るため、国基連に資産が自動的に移管されるのだ。

「50万円以上」放置が85000人

 国基連の集計によると、年金資産を放置して自動移管になった人は、17年3月末時点で累計64万8427人(このうち、資産額が「ゼロ円」の人で加入記録だけの人は26万7448人。全体の41.2%)。6カ月以内に手続きをした人は累計59万7221人で、自動移管になった人より少ない。自動移管になった年金資産の合計額は1667億円で、前年度比239億円増え、過去最高を更新した。

 18年2月末時点では、年金資産を放置して自動移管になった人は累計72万6599人に増えた。18年3月末の自動移管になった年金資産の合計額は「精査中」(国基連確定拠出年金部)だが、過去の増加ペースで試算すると約2000億円に迫る勢いだ。

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 年金資産が自動移管になった約73万人のうち約30万人は資産がなかったり、金額が小さく手数料が差し引かれて資産額がゼロになったりした人で、実害はない。一方、残りの約43万人の資産状況を見ると、1人当たりの数十万~数百万円規模になるケースもある。

 国基連が集計した17年3月末時点の自動移管になった人の資産残高を見ると、1万5000円~25万円が約20.1万人(全体の52.8%)と最多。25万~50万円が約6万人(同15.9%)、50万~100万円が約4.5万人(同11.7%)、100万~200万円が約2.4万人(同6.4%)、200万円超が約1.6万人(同4.2%)などとなっている。

 放置された資産額が50万円以上の人は約8.5万人で、全体の約2割に達するのだ。

企業年金の受給、遅れる恐れ

 年金資産が放置されたままだと、DCの加入期間に算入されず、老後年金の給付開始が遅れる可能性がある。法令上は10年以上加入期間があれば、60歳から年金受給が可能だが、加入期間によっては65歳以降にずれ込む可能性がある。

 退職に伴う転居で住所不明の人も多く、本人や遺族が自分の資産だと気づかない場合も多い。日本企業で過去に働いていた外国人や本人が死亡したケースも含まれているとみられるが、実態は不明だ。

 本人が生きていて、転居手続きをせずに自動移管になった場合を考えてみる。企業が契約していた金融機関から本人の登録住所宛てに資産が国基連へ移管された旨が郵送される。この段階で本人が気づいて正規の手続きをすれば、加入期間の未算入などの不利益は最小で済む。しかし、転居などで郵送物が発送元の金融機関に返送された場合は、公告によって本人に通知したと見なされ、本人が気づくことはまずあるまい。

 国基連の資料によると、16年度は自動移管になった約10.4万人のうち、企業型や個人型に切り替え手続きをした人は約1.9万と全体のわずか18%にすぎなかった。

手数料で目減りも

 自動移管のデメリットはまだほかにもある。自らの資産から手数料が差し引かれるのだ。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。24億円の巨額横領、贈収賄事件など年金ガバナンス、資産運用の諸問題を明らかに。17年7月退社。

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