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巨額の債務が隠されている林業界

森林開発公団、林野庁の国有林野事業、緑のオーナー……に多くの問題

田中 淳夫 森林ジャーナリスト

拡大スギの人工林=岩手県花巻市
 5月6日の朝日新聞本紙に、都道府県の外郭団体「林業公社」の「隠し負債」に関する記事が掲載された。

 林業公社は、民間の森林を公的資金で造林して伐期まで育てたら木材を収穫し、収益を所有者と分け合う事業(分収造林)を行う。そこで公社を抱えていた39都道府県にアンケートを行い、公社を廃止した14府県のうち回答のあった11県によると、計2200億円の債務に対し、時価評価額は99億円余だったことを示している。債務の4%程度にすぎなかったのだ。

 林業公社の負債問題は、すでに大きな問題となっている。たとえば滋賀県では滋賀県造林公社とびわ湖造林公社の二つを設立しており、2010年に両社合わせて1126億円もの負債を抱えていた。その約9割を債権放棄(そのうち県は約770億円)することで、現在は再建途上にある。

 全国の林業公社が行った分収造林面積はおよそ42万ヘクタールだが、潜在的な債務合計を推定すれば1兆円を超えるのは間違いないだろう。

 だが、林業界にはもっと巨額の債務が隠されている。そしてその多くが税金で処理した、あるいは処理しようとしていることを知っておくべきだ。

森林開発公団の債務がとくに問題

 とくに問題なのは、森林開発公団の債務である。森林開発公団は1956年に設立され、その後、緑資源公団、緑資源機構、森林総合研究所内の森林農地整備センター、そして2015年に国立研究開発法人森林研究・整備機構の森林整備センターへと組織を変遷してきた。その役割は、主に水源保安林を造成することとされ、全国各地で分収造林を展開している。仕組みは基本的に林業公社と同じである。現在までに約47万ヘクタールの森林を造成した。

 その事業費の3分の2が政府出資金で、3分の1が財政投融資資金からの借入金である。だが、もともと植林木の生長には向いていない土地が多く、とくに現在の材価では成林後に伐採して木材を販売しても、とても採算が合うレベルではない。

 これらの事業の会計基準で不思議なのは、森林の価値を「森を育てるのにかかった費用と同じ価値」とみなしていることだ。これでは育林経費などの債務が膨らんでも、帳簿上は森林資産に価値を上乗せできる。経費を多くかけるほど価値が増すという仕組みなのである。だから損失が表面化しない。しかし今後造林地が伐期を迎えていくから、伐採を行い木材の売却を行えば赤字が表面化してくるだろう。公団造林は潜在的に莫大な赤字を抱えているのだ。

 せめて造成した森林が水源林としての機能を果たしているのなら救いはあるが、実際の現場は天然広葉樹林を伐ってスギやヒノキの苗を植えたものの、ちゃんと育たなかったようなところばかり。逆に森林の公益的機能を落としたのではないかと言われている。しかも契約は、整備センターと土地の所有者と森林組合の三者で行い、入札は行っていない。最初から森林組合の雇用対策事業としての側面が強いうえ、作業等の経費の算定が甘く、赤字幅を膨らませている。

巨額の赤字を抱える林野庁の国有林事業

 林業関係の負債として忘れてはならないのが、林野庁の国有林野事業における巨額の赤字だろう。国有林の経営は特別会計で行われてきたが、1998年に累積債務が3兆8000億円に達してしまった。

 もともと国有林野特別会計は、森林から得た利益は森林に返すという建前から独立採算にしたものだが、 ・・・続きを読む
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筆者

田中 淳夫

田中 淳夫(たなか・あつお) 森林ジャーナリスト

1959年大阪生まれ。静岡大学農学部卒。日本唯一の森林ジャーナリストとして森林と人間の関わりをテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『森林異変』『森と日本人の1500年』(ともに平凡社新書)のほか、『日本人が知っておきたい森林の新常識』(洋泉社)、『樹木葬という選択』(築地書館)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

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