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顕著さを増すアメリカの分裂

成長の果実はトップの1割前後に集中。格差の定着が進む多様性の国

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

多言語のチャンネルが100以上

人目をひく派手な広告が輝くニューヨークのタイムズスクエア=2018年1月拡大人目をひく派手な広告が輝くニューヨークのタイムズスクエア=2018年1月

 久しぶりにニューヨークを訪れたが、ニューヨークは数年前と大きく変わっていないように思われた。多様でダイナミックな町だが、東京のように日々変化しているとの印象はない。

 ホテルに泊まって驚くのは、テレビのチャンネルが100以上もあることだ。スペイン語の番組はもとより日本語のチャンネルもある。まさに人種のるつぼであるニューヨークという町の反映なのだろう。

 空港からホテルに送り届けてくれた自動車の運転手はインド系アメリカ人。流暢(りゅうちょう)な英語をしゃべったが、友人と少し話をさせてくれというので聞いていたら、インドの地方の言葉だった。

 ちなみにインドには21の公用語があり、原則的に州ごとに言語が異なる。タミル・ナ-ドゥ州はタミール語、アンドレ・プラディシュ州はテルグ語といった具合だ。運転手がどの州の言葉を話しているかは分からなかったが、アメリカにきてもインド人のコミュニティーがほぼそのまま維持されているということなのだ。

 まさにニューヨークは人種のるつぼだということができるのだろう。中国系の人たちの中華街、イタリア系の人たちのイタリアンクォーター。日本人のプレゼンスも決して低くない。筆者が宿泊したキタノホテルは日本系のホテル、有名な日本料理店、すし屋も少なくない。前述したようにテレビのチャンネルが多いのも、もうした多様性を反映してのことなのだろう。

マイナス方向に働きつつある多様性

 多様性はプラスに傾けば、ダイナミズムを生み出し、町を活性化する。まさに、それがこれまでのニューヨークの強みだったといえる。同質性の高い東京とは大きく異なったニューヨークの特色といえるのだろう。

 しかし、多様性がマイナスに傾けば、社会の分裂ということが起こりかねない。そして、ニューヨークは次第にそうした方向へ動いてきているような気がする。

 アメリカの経済成長率は先進国の中では最も高い。しかし、成長の果実はトップの1割前後に集中し、格差は拡大してきているのだ。かつてマーティン・ルーサー・キングが黒人に対する差別を撤回しようと、”We shall overcome” と歌いながら行進したが、まだまだアメリカが” overcome” (克服)しなければならない課題は山積みにしている。

  ニューヨークに久しぶりに来て感じるのは、東京と違って、貧しさと豊かさがまざっている町だということなのだ。東京が全体としてより豊かで、そして、よりきれいな町になっているのに対し、ニューヨークは、相変わらず、豊かさと貧しさが混在している。それが、アメリカのダイナミズムだということもできるのだろうが、貧困から抜け出して成長するというかつての「アメリカン・ドリーム」は既に消えてしまっているといえるのではないだろうか。 ・・・続きを読む
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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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