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動き出した世界で唯一の「分断国家」

韓国と北朝鮮がにわかに接近。体制の異なる国家の統一は容易ではないが……

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

南北対談でもちきりだったソウル

 久し振りに韓国のソウルを訪れた。中国・韓国・日本3か国の有識者会議に出席するためだった。

 韓国のNEAR財団が2016年から定期的に開いている会議だ。たまたま会議が行われた2018年4月27日は南北朝鮮の首脳会議が行われた日だった。北朝鮮の金正恩朝鮮労働委員長が38度線を越え、板門店で会議が行われたのだった。

 韓国のテレビはこの話題でもちきり、韓国の文在寅大統領と金正恩氏の南北両首脳が一対一で対話するシーンが、何度も何度も流されていた。2人の首脳はにこやかに、何を話しているのかは定かではなかったが、談笑をし南北の融和を強く印象づけていた。

 南北首脳がこうして会談するのは10年振りのこと、一体、何が起こっているのか、突然の訪問者には理解しかねるところであった。

ベンチに座って話し込む韓国の文在寅大統領(左)と北朝鮮の金正恩委員長(右)=2018年4月27日、板門店拡大ベンチに座って話し込む韓国の文在寅大統領(左)と北朝鮮の金正恩委員長(右)=2018年4月27日、板門店

高まる雪解けムード

 北の金正恩氏は中国も訪問している。この南北接近が中国の了解のもとに行われたのか、あるいは、米国との会議を念頭において行われたのか定かではないが、北が核実験を停止し、朝鮮半島の非核化に応じる姿勢を見せているのは興味深い。

 一説には、もう実験をする必要がなく、核準備はほぼ完成したとも言われているが、ともかく実験を停止し、一応、非核化に応じる姿勢をみせていることはたしかだ。

 もちろん、核が完全に廃棄されたかどうかを査察によって確認することは困難だし、密かに核保有を継続することは充分可能だ。しかし、米朝首脳会談を経て、北朝鮮がアメリカとの話し合いを進める姿勢なのは明らかである。

 一体、何が起こっているのか、まだ分からないところも少なくないが、ある種の雪解けムードが高まってきているのはたしかなようだ。

 今や、韓国は世界でほぼ唯一の分裂国家だ。東ドイツは西ドイツと統合されたし、南北ベトナムも北主導でベトナム人民共和国となっている。韓国がドイツやベトナムのように北朝鮮との統一に向っているとしたら、望ましいことなのだろうが、はたして共産主義独裁国家が南の民主主義国家と一緒になることができるのだろうか。

20世紀後半から21世紀前半はアジアの時代

 かつて、アジアは世界経済の中心だった。経済史家のアンガス・マディソンによれば、1820年の時点で中国のGDPは世界の28.7%、インドのそれは16.0%だったという。2ヶ国で世界のGDPはほぼ半分を有していたのだ。

 19世紀半ばから、アジアの国々は次第に植民地化され衰亡していくが、第2次大戦後には次々に独立し、世界の地域の中で最も高い成長率を達成した。まず、日本。そして韓国、台湾、香港、シンガポールが続き、1980年代になると、マレーシア・インドネシアなどの東南アジアの国々が高成長を達成してくる。1990年代には、計画経済から市場経済に転じた中国とインドが高い成長を達成することになる。

 まさに20世紀後半から21世紀前半は、アジアの時代ということになっていったのだ。いわゆる「リオリエント」といわれる状況だ。つまり、世界経済の中心がオリエント(アジア)に方向を変えてきた(オリエンティング)ということなのだ。

統合の度合いを強めるアジア

 高度成長を続けるなかで、アジアは次第に統合の度合いを深めていく。 ・・・続きを読む
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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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