安倍政権との距離感で揺れる連合。「財政」でどのような役割を果たすのか
2018年07月01日
今回は連合の神津里季生会長にご登場いただく。
連合会長がニュースに登場する機会はたいへん多い。最近では政府が推進する「働き方改革」関連法案への反対の立場で、昨年は野党再編や総選挙をめぐるキーマンとして、といった具合だ。
その神津会長に財政を語ってもらう意味とは何か。それは、財政とは国家のそろばん勘定だけで決められるものではなく、国民=生活者の血の通ったテーマだからである。
神津さんが示してくれた財政健全化の意義も、まさに「多くの人が将来に希望を持てる社会にすること」だった。そこで掲げたキーワードは「暮らしの底上げ」。昨年まで週刊サンデー毎日に連載していたコラムのタイトルでもある。
働く者、生活する人々のための財政はどうあるべきかを語ってもらった。
戦後の高度成長時代は、日本の歴史を振り返ってみても稀有な状況だったと思います。昨日よりも今日、今日よりも明日――。「未来はずっとよくなる」と信じられた時代でした。
あまりにも良い時代だったために、社会の仕組みを考えるのに際して、この時代の記憶が染みこみすぎているのかもしれません。その「常識」で現在の問題をとらえると見誤ってしまうでしょう。
1973年の第1次オイルショックをもって、高度成長は終わりました。その後、現在に至るまでに少子高齢化が進んで、財政構造も変化しました。いまや社会の担い手の人口が減少しており、政府財政は歳出が歳入を上回る赤字状態が続いています。国と地方を合わせた借金は約1100兆円まで膨らんでしまいました。
日本が先進国で最悪の財政状態になった転換点は1975年度だったのではないでしょうか。この年以降、ほぼ毎年、歳入不足を埋めるための赤字国債が発行され続けている、そのスタートの年です。
赤字国債は正式には特例国債といいます。あくまでも「特例」ですから、その後はよほどの事態にならない限り発行すべきではありませんでした。
ところがその後、自民党を中心とした政治は少子高齢化の問題に真正面から向き合わず、そのときどきの景気対策のために安易に赤字国債を発行し、減税を進めました。その場しのぎの対応です。ここまで財政が悪化してしまった要因には政治の怠慢が大きかったと思います。
民主党政権だった2012年、与党・民主党と野党・自民党、公明党の間で消費税率を10%に引き上げる「3党合意」が結ばれました。しかし、政権交代のあと、安倍首相は景気を理由に消費税率アップを2度も先延ばしをしました。
この歴史的な合意に従って粛々と増税すべきでした。今に至っても安倍政権が3党合意をないがしろにしていることは重大な問題だと思います。
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