2011年10月18日
今年のノーベル文学賞では、ボブ・ディランが取るのではないかという噂が広がった。だれが、どんな根拠で予想してんだか知らないが、アセアセした。これでもいちおうポピュラー音楽を担当しているのだから、ディランが受賞すれば、なにかひとくさり書かなきゃならん。ディランは2000年代に入って、その人気はほとんど神がかり。間抜けな評論を書こうものなら鼻で笑ってやろうという読者が、朝日の社内だけでも37人ぐらいいるのだ、たぶん。
告白するが、自分は最初、ディランの良さが分からなかった。しわがれ声は単調に聞こえたし、ライブを見にいっても、ギターがうまいんだか何なんだか、よく分からない。「だれかの倍音かなあ?」と思ってたらそれがディランのエレクトリックギターの音で、高校生でもしないような単調な3連をテレレ、テレレって延々弾いていた。
確かにいい曲は多いけど、投げやりに歌っているみたいで曲がかわいそうとも思った。古くはバーズの「ミスター・タンブリンマン」や、ブライアン・フェリー「レッツ・スティック・トゥゲザー」、最近ではビリー・ジョエル「メイク・ユー・フィール・マイ・ラブ」まで、カバーの方がディランのオリジナルよりずっといいんじゃないかと思っていた曲も多い。
10数年前のある雨の日、「雨の日の女」を聞いていて、突然、ディランの歌詞が頭にゴーンとぶつかってきた。目を覚まされた。
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