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島宇宙に沈溺する「サブカル糞野郎」の痛さを描いた映画『モテキ』

松谷創一郎 ライター、リサーチャー

 「さっきから俺のサブカルトーク、全部打ち返してくれてんじゃん! スペック高過ぎ!」

 これは、現在大ヒットしている大根仁監督の映画『モテキ』のワンシーンだ。

 主人公はアラサーの青年・藤本幸世(森山未來)。モテない人生を歩んできた彼が、突如としてモテるようになる“モテ期(=モテキ)”が描かれる作品だ。この発言は、幸世が知り合ったみゆき(長澤まさみ)と飲んでいるときのモノローグだ。

 この作品の特徴は、マンガや音楽などサブカルアイコンが、作中に多数登場するところにもある。たとえば冒頭、幸世は音楽やマンガなどを扱うカルチャーサイト「ナタリー」へ就職面接で赴くが、そのとき着ているのは、故・忌野清志郎が率いたザ・タイマーズのTシャツだ。ヒロインのみゆきとはじめて会うのも、下北沢の本屋&雑貨屋チェーン・ヴィレッジヴァンガードの前だ。そして、カルチャー全般を扱う雑誌『EYESCREAM』の編集者であるみゆきと、幸世はマンガ『進撃の巨人』などの固有名詞で盛り上がる。美人で巨乳なだけでなく、サブカル話についてくるみゆきは、彼にとって最高の存在と見なされる。

 そんな幸世の姿に、あるマンガの登場人物がオーバーラップする。岡崎京子のマンガ

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