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【ポスト・デジタル革命の才人たち】千葉麗子さんインタビュー 「『電脳アイドル』の過去から『脱原発』」の未来へ」 (下)――常に革命家でありたい!

聞き手:服部桂・朝日新聞ジャーナリスト学校シニア研究員

――千葉さんはインターネットの黎明期に先端的なことをやっていたのに、ツイッターデビューはそんなに早くなかったんですよね。

千葉 ツイッターは、服部さんから「やってみたら」って勧められたのがきっかけで始めたんですよ。最初から特にやりたい気持ちがあったわけじゃないけど、あれよあれよという間に、どんどんフォロワーが増えていって。私のフォロワーは1万8000人を超えたんですけど、ツイッターはうそがつけないメディアだというのが面白い。発言したものを撤回する人もいるけど、いくら削除しても結局のところ、いろんなところにリツイートされたのが回って、どこかに証拠が残ってしまう。リアルタイムで、いつでも誰かが見ているし、誰かのところに私のツイートが保存してあったりもするでしょ。それから、匿名という点でも面白いと思います。

撮影=河合博司(朝日新聞社)

――かつてのパソコン通信との違いはどうですか。あのころの感覚が戻ってきたのか、まったく違うものなのか。

千葉 あのころの感じもあるとは思います。でも拡散力がまったく違いますね。

――今は原発問題について積極的にツイートしていますが、もともとは今ほど関心はなかったんでしょう?

千葉 そうですね。自分の考えは発信していたけど、やっぱり3・11を境に大きく変わりました。地震が起きたときは東京の自宅にいて、子どもを学校に迎えに行って……。うちの近くで働いている美容師さんに、毛布を運んであげたりました。でもすぐ、「あっ、原発は!?」と思ってツイートし始めました。やっぱり、5歳から15歳ぐらいまで福島にいたせいかもしれないですね。おばあちゃんをはじめ、親戚や友人がたくさんいる故郷だし、原発は幼い頃から危ないと聞かされていましたし。

――地震直後はまさか原発がああいうふうになるとは、みんなあまり思ってなかった……。

千葉 あの後も政府はしきりに大丈夫だと言っていたけど、大丈夫じゃなかったですよね。ツイッターで発言しているうちに、私と同じような感覚の人がいっぱいいるんだと知りました。すごいメディアですよね。ある意味、怖いところもあるけれど……。

――原発の情報はどうやって集めていますか? これまでは、原発は専門家のもので、任せておけばいいと思っていたかもしれない。僕らが子どもの頃なんか、東海村に遠足に行ったりして、「これは無尽蔵にエネルギーを作っているんです」などと教えてもらった。原発は夢のエネルギーだったんです。

千葉 でも、それが覆ったわけですよね。

――スリーマイルやチェルノブイリの原発事故があっても、自分の問題としては距離感があった。たとえば同僚がチェルノブイリの取材から帰ってきて話を聞いて、最初は怖いと思っても、だんだん慣れてしまう。

千葉 その話のほうが怖い(苦笑)

――チェルノブイリで、「私は動きたくないから」と言って住み続けているおばあさんの話を聞いたりしていると、警戒心が薄れていくんですね。もっとリテラシーを持たないといけないと思いますけれども……。

千葉 だから、何とかしなきゃと思って、ツイッターで発言しているんです。私には子供がいるのでやっぱり切実なんですよ。食に関する情報、たとえば産地偽装や、どこのスーパーはどんな対策をとっているか、といったものは必要ですね。

 それと、JR福島駅の西口構内に、私の会社と業務提携しているフィットネスクラブが立ち上がったので、1カ月に1回ぐらい福島市に行っていますし、福島県内でいろんな講演会をやったりしている。その時には必ずガイガーカウンターを持っていきます。ネット上ですぐデマとか言われるけど、測ってみるとデマなんかじゃない。現地で数字を見ると本当に怖くなります。といってもみんなマスクをしてない……。あと、除染すれば大丈夫というのも本当なんだろうかという不安もあります。やっぱり、子供や妊婦さんだけでも避難すべきだと思って、ユーストリームで発言したりもしています。

住民投票条例の署名を呼びかける俳優のいしだ壱成さん(右)と=2011年12月1日、東京都渋谷区

――今一番気になるのは、原発と子供の関係ですか?

千葉 とにかくもう、チェルノブイリの事故のときみたいに子供たちが大きくなってから被害がわかるというのは嫌だから、福島の子供たちだけでも早く避難させてあげたらいいのにと思います。原発はなくしてほしいですが、大きな力――権力が立ちはだかっているのも確かです。でも、動かないことには何も変わらない。状況に何とか風穴を空けたいと思って、原発の是非を問う東京都の住民投票の請求代理代表人にもなって活動しています。

 住民投票というと、原発を誘致しようとしている場所や、あるいはすでにある原発を止めるかどうかを問うものですけど、電力の恩恵を受けている都民こそが、原発について考えるべきだと思うんです。人口が多いところから署名活動をまずやってみましょう、という理由もあって東京と大阪で始めたんです。

 ジャーナリストの今井一さんがこの代表で、私も10代から服部さん同様にお世話になっていたので引き受けました。単なる反原発運動ではなく、原発推進派の人からも意見を聞く。その上で、自分たちで決めましょう、というものです。

――東京都は東京電力の株主ですから、こういう重要なことについては、やっぱり都民が何か言う機会をつくらないといけないということですね。ただ、リアルにどう行動していくのか、というとどうなんでしょう? 投票に行かない人も多いですよね。

千葉 若者の投票率を見るとびっくりしますね。

――何か行動することで自分の知識も広がる。自分から行動するという時代にはなっているのかもしれませんね。

千葉 そう、まずアクションを起こしたり参加したりすることが必要なんだと思います。

●自力で、心と精神の安定を

――さて、原発から話を広げましょう。「千葉麗子」という人は、原発のために生きているわけじゃなくて、ヨーガもあり、デジタルコンテンツもあり、それから昔のDVの話もあって、それが矛盾なくつながっているというところが面白いと思うんですよね。

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