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「メディア芸術祭」と「恵比寿映像祭」にみる映像とアート

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 現在、二つの映像をめぐる大規模な展覧会が都内で開催中だ。一つは六本木の国立新美術館の「文化庁メディア芸術祭」で、もう一つが恵比寿の東京都写真美術館の「恵比寿映像祭」。ともに2月24日(日)までだが、これが何と入場無料で、よく見るとなかなかおもしろい。

 「文化庁メディア芸術祭」の方は、今年で16回目。かつては東京都写真美術館で開催していたが、国立新美術館が新たにできてから移ってきた。内容はアート、エンターテインメント、マンガ、アニメーションの4部門で、国際公募形式でそれぞれ大賞や優秀賞、新人賞などが出されており、受賞作品が展示されている。

 会場に足を運ぶと、平日の昼間でも若い人でびっしり。美大や専門学校で映像を学ぶ学生が多いのだろうか。みんな一つ一つの作品をじっくりと見ている。

 公募といってもアニメーション部門の大賞が大友克洋の『火要鎮』であるように、巨匠の域に達するような人の出品も多い。あるいはアート部門の三上晴子の『欲望のコード』はNTT/ICCで既に展示していたものだ。

 「メディア芸術祭」は、映像をキーワードにあらゆるジャンルで発表された作品を1年分寄せ集めた感じで、「恵比寿映像祭」よりずっと楽しい。

和田淳『グレートラビット』=筆者撮影

 特にエンターテインメント部門にはプロモーションビデオやゲームも含まれていて、見ているだけでおかしい永野亮の『はじめよう』のような映像もある。

 あるいはアニメーション部門の和田淳の『グレートラビット』の手描きアニメは、むしろアートとしての評価がふさわしいかもしれない。

 外国の作品もあるが、アート部門を除くと、マンガやアニメもゲームも日本の作品の質がおおむね上回っている。

 東日本大震災の瓦礫の山を実物大で写真を撮って巨大なパネルにし、そこに彩色して不思議なリアリティを演出している佐野友紀の『ほんの一片』も、メディア芸術と言えるかわからないが、多種多様な動画が並ぶ中で逆に素朴な力を見せている。

佐野友紀『ほんの一片』=筆者撮影

 「恵比寿映像祭」は今年で5回目。今年は「PUBLIC●(左右向きの矢印二つ)DIARY パブリック●(左右向きの矢印二つ)ダイアリー」というテーマを設定し、日本を中心に外国の作品も含めて学芸員が選んで展示する美術館らしい企画だ。

 なかでも英国のベン・リヴァースの四つのスクリーンを使って四つの島を見せるインスタレーションが心に残った。こちらは公募でない分、学芸員の頭の中で考えた感じの展示でいささか退屈な作品もあるが、現代美術とはそういうものだろう。

 この二つの展覧会を見て思ったのは、25年以上もやっているのにいつまでたってもパッとしない東京国際映画祭より、

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