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不思議なぐらいイヤな感じがない朝ドラ『あまちゃん』

青木るえか エッセイスト

 『あまちゃん』なあ……。

 『カーネーション』とはまた別の、入り込めないものがあるんだよなあ……。

 が、そこに行く前に『八重の桜』についてちょっと。何回見てもあのオープニングテーマはいいですね! もう、あの陰鬱なテーマ曲を聞いてるだけでうっとりしますよ。坂本龍一の仕事のなかで最良のものだろう、あのオープニングテーマ曲は。

 が。

 見てられなくなってきた、『八重の桜』。

 最初はあんなにいいと思ったんだが……。

 理由ははっきりしている。綾瀬はるかの会津弁だ。綾瀬はるかが会津弁を発するたびに(ということは口を開けば、ってことだ)、その板についてなさにゲンナリする。会津弁がイヤなんじゃなくて、板についてない会津弁をあやつる女が主人公の時代劇、がイヤなのです。

 趣味で東北地方に行くことがよくあって、若い女の子が地のことばをしゃべってるのを聞くと、すごく可愛い。いや東北に限らず、若者がふつうに方言しゃべるのはイイものなのである。

 が。

 綾瀬はるかはダメであった。ネイティブじゃない人がムリしてしゃべってるんだからしょうがないとはいえ、私はアレは受けつけない。

 ときどき方言ものドラマで、こういうことがある。TBS系の昼ドラ、ポーラテレビ小説『おゆう』における浜尾朱美の長崎弁はひどかった。ほんとにひどかった。綾瀬はるかのせいで眠っていた浜尾朱美の記憶までよみがえってしまった。

 こういうふうに、全体には概ね文句がなくても、一点「自分にはがまんできない」「ぞげーっとしてしまう」部分があると、テレビドラマなんて見てられなくなるものなんです。

 『平清盛』も、あれはどう考えても自分が好きになってしかるべき作品であったが、オープニングテーマやら劇中やらで、子供の声で「あそびをせんとや~~~~」が聞こえてくるともうゲンナリでその先に進めずテレビ消した。他にもいろいろ気になるところはあったが、清盛における最大の「見る気をなくす要員」は「あそびをせんとや~~~~」で、『八重の桜』は八重の会津弁。

 そこで『あまちゃん』なんですが、この番組には「大量の地雷が埋まっている」ようなにおいがぷんぷんする。最初っからもう警戒警報がぎゃんぎゃん鳴っていた。

 宮藤官九郎脚本……小泉今日子……宮本信子……うへえ。海女だって……うへえ。音楽が大友良英……大友さん……私は大友さんのファンなので、大友さんの音楽が朝ドラのテーマ、というのはたいへん心おどるものがあるのだが、それと同時に「“大友良英をつかおうというNHK”の匂い」っていうんですか、そういうものも感じてしまって、なんとなく気が重い。

 と、思ってたんだけど、今まで見てると不思議なぐらいイヤな感じはないんですよ、『あまちゃん』。

 埋まっている地雷に触れることなく、スタスタと歩いていかれちゃってる感じ。ええー、なぜ、なぜなんだ。

 お前はあら探しのためにテレビ見てんのか!って言われそうだが、はい、そうです。というかテレビでいろいろ気にさわることがあると腹が立つので、その気にさわるところを大声で「気にさわるんじゃー!」と叫ぶといくらか気も収まるのでそうしてるんですが、『あまちゃん』は、(悪い意味での)役者が揃い、(悪い意味での)お膳立てもきっちりできあがっている、のにもかかわらず、いつまでも(悪い意味での)クライマックスがやってこない、という、私にとってとても不思議な作品なんです。

 今のところすごく評判がいい。

 そりゃそうだろうな。『純と愛』がアレでしたもん。アチラも有名脚本家で、こちらもある意味有名脚本家で、アチラもこちらも、自分のフィールド(と思われる)に強引に作品をひきつけて書いてるけど、アチラはあの有様で、こちらは「わー『あまちゃん』おもしろいー!」ってことになっていて、勝負はついた。

 私としても、アチラの脚本家は威張っていて宮藤官九郎は腰が低いのでこちらのほうを応援したい。しかし、私などが応援せずとも『あまちゃん』は大人気だし、ここは「この作品に埋まる地雷」を掘り起こし、どっかの広場でまとめて爆発させたい。

 まず、『あまちゃん』がツイッターとかでやたらもりあがるところの、

 「薄い本が出てきた」=同人誌の登場=そういうものをつくったり買ったりしてた層へのアピール。

 「小泉今日子が現役アイドルの時代の、仲間みたいなアイドルが雑誌やビデオとかで登場する」=当時の若者へのアピール&現在のマニアックな若者へのアピール。

 「手書きアニメーション」=なんとなく目新しいような画面。

 といったあたりは、どうでもいいというか、そのへんの盛り上がりは『ゲゲゲの女房』でガロ(をモデルとするゼタ)が出てきた時の盛り上がりと同じで、「うわ!こんなオレにしかわかんないようなものをテレビでやっちゃって」(といいつつ全国で何十万人もわかってる)という気持ちにさせる、というだけのつまらんクスグリだ。

 出演俳優陣が凝ってるという賛辞もある。俳優にあまり詳しくないのでほんとに凝ってるのかどうかわかんないのだが、年増海女に美保純を持ってきたのとかは、ウマイナーと思わされる。思わされるが「ちっ、うまいことホメられそうなのを探してきたな」という程度だろう。でも、美保純にしても、他の、うまいこと探してきたホメられそうな助演陣も、芝居が自然なのはいい。

拡大「あまちゃん」に出演する3世代。左から天野春子(小泉今日子)、アキ(能年玲奈)、夏(宮本信子)

 小泉今日子もホメられてるが、芝居はヘタと思う。とくに怒るとか感情高ぶらせる演技になると、「シロートの人が、怒りなれないのにむりやり怒鳴ってる」みたいで……って、……ハッ。それはもしかして ・・・続きを読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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