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復活「ベルばら」大人気と「週刊新潮」皇室報道を結ぶ点と線

矢部万紀子 コラムニスト

 このところ週刊新潮の皇室報道がぶっとんでいる。6月20日号で「『雅子妃不適格』で『悠仁親王』即位への道」と打ち上げ、翌週は「『雅子妃』不適格は暗黙の了解『千代田』の迷宮」とたたみかけた。

 宮内庁側は猛然と反論している。発売の6月13日に即、編集長への抗議文をホームページ上にアップ、宮内庁長官が記者会見で「事実無根」「訂正記事を要求中」と説明するだけでなく、詳しく「見解」を述べ、その要旨を同じくホームページで公開している。

皇后陛下の喜寿を祝う茶会で、乾杯する天皇、皇后両陛下=2013年6月22日、京都御所皇后陛下の喜寿を祝う茶会で、乾杯する天皇、皇后両陛下=2013年6月22日、京都御所
 私が週刊誌の記者として皇室報道にかかわった最初は、皇太子ご夫妻のご成婚だった。

 その後、「雅子の人格を否定するような」ことがあったりして、皇室関連記事へのかかわりはますます増えた。

 いま編集長をしているシニア雑誌では美智子皇后が超大人気で、関連連載もしている。だから宮内庁ホームページはしばしば見ているが、今回の怒り具合はかなりなものだと思う。

 と、ここで話は突然変わり、「ベルサイユのばら」である。40年ぶりの新作が4月に週刊マーガレットの付録になったら大人気で売り切れ続出、6月5日発売の週マ本体に再掲載された。

 中学時代、「ベルばら」に夢中になった身として遅ればせながらアマゾンで中古を買い(送料込みで定価の倍以上!)読んだ。

 アンドレとオスカルが出会う子ども時代から始まり、最後は成長した2人の「愛」に行き着く。ファン心わしづかみの王道中の王道ストーリー。大人買い爆発、売り切れも当然だと納得した後に、「ベルばらと私」についてモゾモゾ頭で考え、「ベルばら」は私の「美智子皇后観」の礎となっているのだと再認識した。

 と、ここで再び、宮内庁長官の週刊新潮への見解に戻る。以下、その一部をホームページからコピペ。

 さらに,「皇后陛下は,『もし仮に,陛下がおられなくなって,私が一人残されたとします。その時のことを考えると,とても不安を覚えます』と近しい人に打ち明けられている。ご公務の引継ぎなどはもちろんのこと,はたして皇太子ご夫妻が,ご自身を適切に遇してくれるのだろうか…その点を気に病んでおられるのです。」との記述もありますが,常に周囲をお気遣いになっている皇后陛下のお立場を鑑みるに,そのようなご発言をされることなど,到底考えられません。

 「ベルばら」が私の皇后観の礎となったと書いたが、正確には少し違う。『マリー・アントワネットとマリア・テレジア 秘密の往復書簡』という本が礎だ。岩波書店刊、2段組、436ページ。今から10年ほど前、本が出た直後に「あ、アントワネットだ」と購入、一気読み。通常のわが脳みそではありえない。

 この史料がツヴァイクの名著『マリー・アントワネット』となり、それが「ベルサイユのばら」の原点であろうから、ものすごく予習済みだったわけで、その意味で「ベルばらが礎」。

 アントワネットがフランス王太子に嫁いだときから、母親であるテレジアが死ぬまでの10年に交わした手紙167通が収められている。14歳の花嫁は読書が大嫌いで、ドイツ語もフランス語も文法が苦手。そしてテレジアの表現を借りれば「好奇心が強い享楽家」。

 さらにこの本、「秘密の往復書簡」が「秘密」である所以なのだが、夫は包茎でいつまでたっても「完全な夫婦」になれない。だからアントワネットは、とんでもなくおしゃれはするわ、賭博はするわ、もらったトリアノン宮殿にお金をつぎこむわ、となる。そんな娘を心配した母親は、手紙で繰り返し過ちを指摘し、諭す。

 マリア・テレジアが言っていることはひとつだけだと、私は理解した。私なりに表現するなら、

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