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東京国際映画祭は変わったのか?

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 昨年ここで東京国際映画祭の批判を5回に分けて書いたが、今年はトップがギャガ会長の依田巽氏からKADOKAWA取締役相談役の椎名保氏に代わった。その最初の映画祭が先日開催されたので、まず何が変わったのか、良くなったのか悪くなったのか、分析してみたい。そして後半は具体的で前向きな処方箋を提案する。

 まず、作品の数が減った。一言で言うと特別協賛のトヨタ自動車が撤退したために、そのエコ志向を反映させたnatural TIFFのセクションがなくなった。グリーンカーペットは残ったが、HPやチラシ、会場からは緑色が減り、赤が中心となった(写真1)。

【写真1】 会場の入り口【写真1】 会場の入り口
 アジア部門のコンペが「アジアの風」から「アジアの未来」になり、長編2本目までの作品に絞って、本数も26本から8本に減った。その分「ワールド・フォーカス」(2013年までの「ワールド・シネマ」)で台湾映画特集があり、こちらの部門は12本から21本に増えている。全体として主要部門は、去年の91本から74本となった。

 次に、これまで土曜から翌週の日曜までだったのが、木曜に始まり、翌週の金曜で終わった。これは椎名氏の「オープニング、クロージング、そしてその間の土日にもう一つ山を作る」「土日の興行につなげる」という考えが反映されたものだ。

 確かに土曜が初日、翌週日曜最終日だとどちらの週末も中途半端で、今回の方が土日にたっぷり映画を見ることができた。考えてみたら各国の国際映画祭も水曜や木曜開始が多い。できたら翌週の土曜か日曜までやれば、外国の映画祭と同じになるし、一般の観客もより楽しめるのではないか。

 内容面で気づいたのは2つ。1つは特別招待部門に日本のアニメが3本加わったことだ。これは日本を代表するアニメというコンテンツを世界に売り出したいという椎名氏の考えに基づく。ぜひ来年はコンペにもアニメを入れて欲しい。

 アニメと言えば、大藤信郎監督『くじら』(1953)などの古典3本のデジタル復元版や発掘された2本の上映もあった。直前に加わったが、市川崑監督『東京オリンピック』(1965)のデジタル復元版も上映された。こうした復元版の上映はカンヌやベネチアも力を入れており、これを機会にもっと増やしてほしい。

上映後の記者会見をおこなった『ある理髪師の物語』のジュン・ロブレス・ラナ監督(中央)【写真2】 上映後の記者会見をおこなった『ある理髪師の物語』のジュン・ロブレス・ラナ監督(中央)
 一般観客には関係がないが、今年からコンペ作品の記者会見を上映後にやることになった。

 これは去年私がここで、プレス上映と記者会見の時間がかぶるのはおかしいと書いたことに対して、椎名氏が応えてくれたものだ(本人から聞いた)。上映直後の同じ場所での記者会見は海外では例がないが、映画の余韻が残っていて、悪くなかった(=写真2)。

 以上が目立った変化だろう。出品作そのものは、20本ほどを見た印象から言うと、例年に比べてアジア映画が物足りないが、レベル的にはあまり変わっていない。全体として一言で言うと、変化の兆しは見えたがもっともっと徹底的に変えて欲しいと思う。そのためにここでは大胆な提案をいくつか述べたい。

 1つはアジアのセクションをなくすことだ。

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