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ジャンルを越えた刺激に満ちた展覧会「イメージメーカー展」

赤坂英人 美術評論家、ライター

 日常に潜む美しさと驚きを鮮やかに浮かび上がらせる、そんなスペクタクルな展覧会が閉幕を迎えた。東京・六本木にある「21_21 DESIGN SIGHT」で開催されていた「イメージメーカー展」である(7月4日から10月5日)。

 それは美術、デザイン、写真と音楽を融合させ、多種多様な世界の豊かさを、ジャンルという境界を越えて表現してきた6人のクリエイターたちの想像力の飛翔を見せる珠玉の小説集のような展覧会だった。

 参加したアーティストの中心は、フランスで彼を知らない人はいないと言われるジャン=ポール・グード。これまであまり日本では紹介されてこなかったグードだが、彼は1960年代からアート、写真、映画、デザイン、広告、モードなどさまざまな分野で活動し、その壁を横断する表現活動をしてきたクリエイターである。

 1989年には、パリで盛大に行われたフランス革命200周年の国家的記念パレードの演出を手掛けた。一方で彼はシャネルなど有名ブランドの広告やスーパーモデルとの仕事をはじめ、時代のエスプリを鮮明に映し出す作品を発表してきた。来日した彼のレクチャーからは、彼がプライベートな恋人たち(彼のミューズ)から受けるインスピレーションを、作品にまで昇華させるエロス的創造力を持ったアーティストであることが伝わってきた。

 今回は、映像が無限にループするパリの地下鉄のデパート広告のビデオ・インスタレーションや、ミューズの一人であるグレイス・ジョーンズをモチーフにした動く大型彫刻『構成主義のマタニティドレス』をはじめ、エロスと構成的美しさに満ちたヴィジュアル作品とインスタレーションを大胆に展開した。

 そのグードの作品のために音楽を制作したのが気鋭の作曲家・三宅純である。三宅の、脳にドーパミンを打ち込むようなメタリックな音楽が、安藤忠雄の設計である会場全体をオペラのような劇的空間に変貌させていた。

 他にも、恐ろしくも静かに動く、見たこともない映像作品

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