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[1]ネット動画は「絵付きラジオ」である

ビートたけし、マックスむらい、はじめしゃちょー、M.S.S.Project……

太田省一 社会学者

 「ユーチューバー」。動画共有サイトYouTubeに自作動画をアップして人気を博している一般のユーザーのことである。

 2014年暮れ、「THE MANZAI 2014」で優勝した博多華丸・大吉のネタの中に、いきなりこの単語が飛び出してきた時はちょっと驚いた。テレビの漫才ネタに出てきて自然に通じるほどその存在が世間に浸透しているとは思っていなかったからだ。

 だが少し考えれば、私の認識の方が甘かったのかもしれない。

 例えば、今これを読んでいる皆さんの中にも、YoutubeのCMをテレビなどでご覧になったことのある方もかなりいるのではなかろうか。HIKAKIN、マックスむらいなど、ユーチューバーの中でもスター的存在が登場してYoutubeの魅力を語る内容だ。

YouTube Japan 公式チャンネル

 キャッチコピーは「好きなことで、生きていく」。日本では2008年に投稿者なら誰でも広告収入を得られる仕組みができ、そのころから動画の世界は活況を迎えたと言われる。つまり、ビジネスチャンスが広がったわけだ。

HIKAKINさん拡大人気ユーチューバーのHIKAKINさん
 好きなことをアップした動画が収入になり、それでもし生活できれば言うことはない。実際、数十万、数百万単位で再生されるヒット動画を次々とアップするユーザーが何人か誕生し、ユーチューバーとして有名になった。

 今回から始まるこの連載、インターネット上で視聴可能な動画の中から最新のものを中心に、これはと思ったものを毎回何本か取り上げていきたいと思っている。

 私は、動画をアップしているわけでもなく、インターネットのビジネスに携わっているわけでもない。いわばただの一視聴者である。けれども同じような人が全体では圧倒的に多いのではなかろうか。

 ユーチューバーの存在が象徴するようにインターネットで動画シーンが盛り上がっているのは知っているが、数もジャンルもあまりに多く何から見ればよいのかわからない。そういう人のためのささやかな手助けになればと願っている。

 さて今回まず取り上げたいのは、ニコニコ生放送での『ビートたけし生出演! 【衆院選2014】開票特番』である。

ビートたけし生出演! 【衆院選2014】開票特番

 2014年12月14日に実施された衆議院総選挙。地上波テレビでも当然開票結果を伝える生特番を各局が組んでいた。そんな中でニコニコ動画の開票特番にビートたけしが生出演したのである。

 インターネットの報道特番に、たけしほどの超のつく大物が出演するのは珍しい。

 当日のたけしは、地上波では好きなようにしゃべれないからと嘆いてみせたうえで、思う存分フリートークを繰り広げた。

 議員に学力テストを受けさせる、投票を宝くじ付きにする、と提案、さらにはユーザーからの「総理になったらどうする?」の質問には、核武装と徴兵制、そして吉原の復活、さらには東京湾に有料のヒロポン許可区域を設置してその横に原発建設、日本は鎖国して秋葉原をかつての出島のようにする、と一気にまくし立てた。

 このあたりは、たけしがこれまで他の場所でも語ってきたことの繰り返しではある。しかしそれでもこの番組で聞くたけしの“放言"は、私には最近になく面白かった。

 その時私は、かつてのたけしの深夜ラジオをそこに重ね合わせていたのである。

 たけしの出演場面には、アナウンサーの八木亜紀子が一緒に登場し、暴走するたけしを自由に泳がせながらも絶妙のフォローをしていた。タイプは違うものの、その姿はたけしの『オールナイトニッポン』での名パートナー、高田文夫を彷彿とさせた。

 そこで思ったのだが、インターネットの動画とは多かれ少なかれ「絵付きラジオ」なのではあるまいか。

 そう表現するとメディアとして何か退行したような印象があるかもしれないが、そうではない。そこにこそ同じ映像メディアでありながら、テレビとも違う魅力というか、味わいが生まれる理由があるように感じるのだ。

 例えば、一般のユーザーがアップする動画に多いゲーム実況にもその要素がある。

 先述のマックスむらいは、「パズル&ドラゴンズ」のゲーム実況で有名になった。

【パズドラ】#1 どこまでいけるか!降臨チャレンジに連続挑戦!(神王妃,武刀神,大義賊,魔公子)

 だが、どんなゲームであれ基本スタイルは大体同じだ。ゲーム画面が大きく映し出され、プレイヤーが、自ら実況しながらプレイするという形式である。

マックスむらい拡大ユーチューバーのマックスむらいさんもノリのよさが
 マックスむらいもそうだが、有名なユーチューバーたちは概してしゃべりに人を惹きつけるものがある。それは単に流暢というよりは、キャラクター込みのノリの面白さだ。そのノリを共有できるユーザーがバーチャルな仲間となり、一種のコミュニティを形作る。

 そのノリを共有できない人から見れば、意味が解らずただ「くだらない」ということかもしれないが、共有できる人から見れば「くだらない」は褒め言葉にもなる。

 ユーチューバーの一人はじめしゃちょーの ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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