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真田風雲録とコミュニティ難民をつなぐもの(上)

「武士」という身分を捨てきれなかった真田幸村と大野修理

福嶋聡 ジュンク堂書店難波店店長

 2014年も押しつまった12月19日(金)、神戸アートシアタービレッジで、劇団風斜公演『新(いま)・真田風雲録』を観た。劇団代表で演出の日下部佐理とは、かつて一緒に演劇活動をしていた仲だ。37年前、最初に同じ板に乗ったのが、『真田風雲録』 の舞台であった。

 その時にもらった、十勇士の一人「由利鎌之介」は、およそ10年間に亘った演劇活動の中でも、ぼくが特に好きだった役である。今でも、台詞の端々が、記憶に残っている。

 「俺のやっていることは、いわば無駄で余計なことさ。でも、無駄や余計を馬鹿にしてほしくはないな」

 籠城中に大坂城新聞を発行し、冬の陣の戦記を書こうとして仲間に批判された時のこの由利の台詞は、ぼくがその後の書店人生で何度となく人知れず呟いた言葉となった。

福田善之拡大福田善之氏
 『真田風雲録』は、真田幸村率いる真田十勇士を中心に、大坂冬の陣・夏の陣を描いた福田善之の傑作である。

 舞台を見た井上ひさしが圧倒され、劇作家となることを延期して「ひょっこりひょうたん島」のシナリオを書き始めたというのは、有名なエピソードだ。

 初演は1962年、関ヶ原の合戦(1600年)で序幕が開き、大坂城落城(1615年)で幕が降りるこの芝居の描く15年という年月は、敗戦(1945年)から60年安保闘争(1960年)に至る15年と同じである。

 大坂方の敗北は、60年安保闘争の敗北と重ねあわされ、初演時の観客は、舞台で繰り広げられる光景に、同時代を見ていたのだった。

 それから半世紀が経ち、かつての同時代も過去となった。大坂の陣の攻防に、「いま」を見る興奮を、今日味わうことはできない。だが、舞台から距離をとることが出来るようになったその分だけ、この芝居の中心的なモチーフがより鮮明に浮かび上がって見えたとも言える。「なぜ、大坂方(=60年安保)は、敗北したのか?」

 かつて十勇士の一人を演じたぼくが、 ・・・続きを読む
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筆者

福嶋聡

福嶋聡(ふくしま・あきら) ジュンク堂書店難波店店長

1959年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。1982年、ジュンク堂書店入社。サンパル店(神戸)、京都店、仙台店、池袋本店などを経て、現在、難波店店長。著書に『希望の書店論』(人文書院)、『劇場としての書店』(新評論)など。

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