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マツコ・デラックスは帰ってきたお茶の間アイドル

幸せになれる見た目、弱さがにじむ人間味

太田省一 社会学者

 マツコ・デラックスの人気が加速している。すでに芸能界屈指の売れっ子ではあったが、2015年4月からさらに3本の新番組が始まり、テレビのレギュラーは計9本になった。

 マツコと言えば「コラムニスト」の肩書き通り、切れ味鋭いコメントが代名詞だ。9本中最古のレギュラー番組『5時に夢中!』(TOKYO MX)では、コメンテーターとしてのマツコの健在ぶりを知ることができる。新聞記事をネタにした縦横無尽なトークが聞けるこの番組にマツコの真骨頂があると考えるファンも多いだろう。

 その幅広い知識、鋭い観察眼、そして的確な表現力には、確かに感嘆させられることが多い。

 例えば、局アナネタもそのひとつだ。人気の女子アナなどだけでなく、それほど知名度がない男子アナまで事細かに特徴を知っていて、簡潔な言葉で批評する。

 局アナは建前で生きる典型のような存在だが、その間隙をついて本音を引き出す。だがそれだけでなく、本人も気づかない勘違いを指摘し、愛情ある助言もする。

マツコ・デラックスさん 2013年拡大テレビ界を席巻しながらテレビ界も厳しく批判するマツコ・デラックス
 そこにあるのは、ぶれない視聴者目線だ。包み隠さず語る本音の言葉は「毒舌」とも言われるが、視聴者の共感できる視点がベースにあれば、むしろ歓迎される。その第一人者が今はマツコ・デラックスということだろう。

 その点、これまでのマツコの集大成とも言えるのが『マツコの知らない世界』(TBS)である。

 ご存知のように、「ドレッシング」や「手帳」など、わかりきっているようでも実は奥の深い世界について、その道の専門家がおすすめ商品などを紹介しながらマツコと1対1のトークを繰り広げるという内容だ。

 テレビの面白さのひとつは、未知の人や物に出会うワクワク感であろう。

 この『マツコの知らない世界』は、マツコという〝優秀な視聴者〞(そのあたりがナンシー関と比較されるゆえんでもある)を通して、視聴者がそのワクワク感を共有できるお手本のような番組である。

 この番組のマツコは、ゲストの専門家が登場した瞬間にその人のキャラクターを見抜き、面白さを上手に引き出す。視聴者も感じているツボを期待通りおさえてくれるのである。

 深夜帯からゴールデンタイムに昇格した番組として、この番組が昨今数少ない成功例のひとつになっているのもうなずける話だ。

 だがこの番組にはマツコの別の魅力も見える。 ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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