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[6]ネット動画は「実況する社会」を生む

マックスむらい、アブ、Bell……

太田省一 社会学者

 「ネットの世界は何と実況する人々で溢れているのだろう」。そう感じることがある。

 「実況」と聞くと、テレビやラジオのスポーツ中継のようなものを連想する人が多いかもしれない。だが、ネットの世界で言う実況は、それとは違っている。

 例えば2ちゃんねるには「実況ch」がある。その中にテレビの実況板もあるが、そこではテレビやラジオのスポーツ中継のような実況が行われるわけではない。

「ゲーム実況」イベントでは多くの若い女性が壇上のプレーヤーを見つめていた=3月29日、京都市下京区201504拡大多くの若者が壇上のプレーヤーを見つめていた「ゲーム実況」イベント=2015年3月、京都市
 視聴者が放送中の番組への感想やツッコミなどをリアルタイムで書き込み、それにまた他の視聴者が反応する。

 場合によっては、番組そっちのけで視聴者同士の雑談が盛り上がったり、言い争いが起こったりすることもある。その様子はまさに「実況する社会」だ。

 そしてネット動画の分野でも、実況は盛んだ。なかでも代表的なのが、ゲーム実況である。

 YouTubeやニコニコ動画の人気動画ランキングには、ゲームプレイの模様を実況した動画がずらりと並ぶ(言うまでもなく、ゲーム画面を投稿することには著作権上の問題が絡んで来る。ただ最近、任天堂が自社ゲームのプレイ動画についてユーザーと広告収益を分配するプログラムの運用を開始するなど、まだ限定的ではあるが公認の流れが進んでいる。各メーカーの対応についてはこちらを参照されたい)。

 ニコニコ動画では、2015年「闘会議2015 GAME PARTY JAPAN~ゲーム実況とゲーム大会の祭典」というイベントを初開催した。恒例になっているイベント「ニコニコ超会議」から人気のゲーム部門を独立させた形だ。

 1月31日から2日間で、来客者数が3万5千人余、ネット来客者数が574万人余に及んだという。すでに来年の開催も決まっている。

ゲーム実況は自分実況

 では実際、ゲーム実況はどのような形で行われるのか。例えば、ユーチューバーのひとり、『パズル&ドラゴンズ』のゲーム実況で有名なマックスむらいの動画は、こんな感じだ。

 向かって左側にはプレイ中のゲーム画面、右側にはプレイするマックスむらいを正面からとらえた画面。マックスむらいは、ゲーム画面を見て攻略法を考えて選択し、それを実行に移す。そしてその結果に一喜一憂する。

 その一部始終をマックスむらいは、自分の口から言葉にして伝える。それがこの場合の実況だ。

 ここでもやはり、テレビやラジオのスポーツ中継とは違うのがおわかりだろう。

 根本的に違うのは、ゲーム実況の場合、 ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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