入念な“リハーサル”を経た極上のドキュメンタリー
2015年05月27日
「聞きたがりの徹子ちゃん」。黒柳徹子は、子どもの頃、こう呼ばれていたそうだ(『徹子の部屋1』朝日文庫)。
小さな子どもが、好奇心をおさえられず質問攻めで大人を困らせるのは珍しいことではない。だが黒柳徹子の場合、大人になってもその旺盛な好奇心は少しも変わらなかった。
そのことを証明するのが、2015年5月27日で放送1万回を迎えたテレビ朝日『徹子の部屋』だ。放送第1回は1976年2月1日で、その時のゲストは森繁久彌。それ以来およそ40年もの間、お昼の時間帯を代表するトーク番組として続いてきた。
NHKの専属俳優として、テレビの本放送が始まった1953年当時からすでにテレビに出演していたというからすごい。
そしてその後も『夢であいましょう』や『ザ・ベストテン』など数々の人気番組に途切れることなく出演し、デビューから60年以上たった今も第一線という、他に類を見ない存在である。
『徹子の部屋』が長く支持されるベースにはまず、そんな黒柳徹子というテレビの申し子のような存在がもたらす安心感があるだろう。
お昼にチャンネルを合わせれば、変わらぬ玉ねぎヘアの彼女が、衰えを知らない早口なおしゃべりでゲストの話を引き出し、時には一流のサービス精神でセーラームーンのコスプレまで披露する姿には、「いつもそこにいて楽しませてくれる」という絶大な安心感がある。
これまで何度か模様替えはあったが、大きなソファーとテーブルの置かれた「部屋」のセットの基本は変わらない。
ゲストはいわば、黒柳徹子の自宅の応接間に通された来客である。
テレビの前で見ているこちら側と同じく、テレビの中にもくつろいだ雰囲気の“家庭"がある。視聴者にとってその安心感もあるだろう。
だが『徹子の部屋』には、独特のハラハラ感やワクワク感もある。
「聞きたがり」の子どもがそのまま大きくなったような黒柳徹子の好奇心が、時々ちょっと度を超えてしまうようなことがある。
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